本日、司法修習生に対して修習給付金を支給すること等を内容とする改正裁判所法(以下、「本法」といいます。)が成立し、第71期司法修習生から修習給付金が支給されることとなりました。本法により、第71期以降の司法修習生に対し、基本給付金として一律月額13万5000円、さらに必要に応じて住居給付金(上限3万5000円)及び移転給付金が支給される見込みとなっています。
2011年にいわゆる「給費制」が廃止されて以来、無給での司法修習を余儀なくされてきた司法修習生の経済的困窮が緩和されることとなったのは、ひとえに国民の皆様、国会議員の皆様、法務省を始めとする関係各省庁及び最高裁判所のご理解とご協力があったからであり、心から感謝申し上げます。
しかし、取り組むべき課題は依然として残されています。
修習専念義務が課され、原則として副業が禁止されている司法修習生にとって、本法による給付金額は、経済的不安なく司法修習を行うためには決して十分とは言えません。司法修習制度は、三権の一翼たる司法を担う法曹として、必要な能力、見識及び倫理観を習得するために必要不可欠な制度です。こうした制度の重要性を踏まえれば、より充実した司法修習を実現させるべく、司法修習生に対する適正な給付金額について引き続き検討していかなければなりません。
また、本法では、無給での司法修習を余儀なくされた第65期から第70期までの司法修習生に関しては何も触れられていません。これら給費を受けていない、いわゆる狭間世代も、給費制のもとで修習した旧第65期、第64期以前及び本法制度で修習する第71期以降の司法修習生と同じく修習専念義務を課された者ですから、それに見合った給費を受給すべき立場にあります。しかし、第65期の法曹のうち、貸与金の支給を受けた人は、早くも2018年7月から貸与金の返還を迫られるため、狭間世代への給費制度に代わる是正措置の整備は、早急に取り組まなければならない課題です。
以上のように、本法成立後も、適正な給付額の実現及び狭間世代への給費制度に代わる是正措置の整備という2つの大きな課題が残されています。
当会としては、今回の修習給付金創設に込められた皆様からの弁護士に対する期待に応えるべく、より一層、基本的人権の擁護と社会正義の実現のための諸活動に注力すると同時に、今後も、皆様のご理解を得て、こうした給付額の適正化と狭間世代への給費実現という課題を解消すべく、引き続き運動を継続していく所存です。
2017年4月19日
愛知県弁護士会 会長 池 田 桂 子