1 日弁連第64回人権擁護大会プレシンポジウム「再生可能エネルギー100%地域への道」開催されました

⑴ 2022年8月19日、当会会館において、標記のシンポジウムが開催されました。

 今回のシンポジウムでは、当会が開催した「どうする浜岡原発」(2012)「核のゴミとどう向き合うか」(2013)「福島原発事故の教訓は活かされているか」(2014)「地域から考えるエネルギー政策」(2015)の4つのシンポジウムを踏まえ、再生可能エネルギーについて、地域からの普及拡大の施策の可能性などに関する報告や議論が行われました。

⑵ 基調講演では、特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長の飯田哲也氏より、「脱炭素先行地域からの挑戦」と題して、再生可能エネルギーの普及の状況などについて、世界と日本の状況の比較を含めて講演が行われました。

2050年までに、地域でも世界全体でも再生可能エネルギー100%が可能であることは今や世界の科学者のコンセンサスになっていること、その中心として太陽光発電、風力発電、蓄電池が期待されていること、が紹介されました。特に、太陽光発電は世界のエネルギ-消費に対する膨大なポテンシャル(約2850倍)を有しており、永続的な資源であること、放射能汚染の問題もなく、気候変動につながるおそれもないことなどから、太陽エネルギー(を含む自然エネルギー)100%の社会になっていくべきことは自明であることが強調されました。実際、太陽光発電・風力発電を中心とする再生可能エネルギーのコストは劇的に低下しており、世界史的転換ともいうべきパラダイムの転換が起こってきています。しかしながら、日本においては、再生可能エネルギー100%がコンセンサスとならず、原子力や石炭火力を中心とした旧来のエネルギーコンセプトが生き残ってしまっていることや、電力自由化が中途半端であったこと、電力市場が有効に機能しないことなどの問題点も指摘されました。

⑶ 基調講演に引き続いて、前出の飯田氏、株式会社三河の山里コミュニティパワー(以下「MYパワー」)の萩原喜之氏をパネリストに迎え、当会から中根祐介会員がコーディネーターとなってパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでは、冒頭に、飯田氏から、再生可能エネルギー100%の実現は可能であるが、旧来のエネルギーコンセプトに囚われている階層を変えていくためにも、地域からの取組を進めていくことの重要性が指摘されました。萩原氏からは、電気料金の高騰などの状況は、地域の市民等が地域でエネルギーを作ることに対する関心が高まることに繋がるのではないか、という視点が示唆されました。その他、基調講演での報告にも関連して、電力市場のルールの不合理性や自由化の不徹底などの問題点が紹介されたり、環境破壊を起こさない再生可能エネルギー拡大のためにどのような方策が考えられるのか、といった点についての言及がなされました。

⑷ 当委員会では、今後も地域で再生可能エネルギーを取り組むための方法等を検討・議論して参ります。

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2.答志島の現地視察 ~海洋プラスチック・海洋ゴミ問題~

⑴ 2022年11月14日から15日にかけて答志島にて、海洋プラスチック・海洋ゴミ問題に関する視察を行いました。

⑵ 小浦嘉門氏(22世紀奈佐の浜プロジェクト委員会)と千葉賢氏(四日市大学教授)を講師に迎え、伊勢湾沿岸の漂流ゴミ等についてお話を伺いました。

伊勢湾沿岸の漂着ごみは、年間約12,000tと推定され、その1/4である約3,000tのゴミが答志島の奈佐の浜に漂着しているとのことでした。漂着ごみの7~8割りは木材等とのことですが、漂着ゴミには無数のプラスチックゴミが含まれ、大小様々なプラスチック片が確認できました。マイクロプラスチックは大きさが5mm以下(~1μm)のものとされ、工業生産された時点での大きさがこれに該当するものを1次マイクロ、断片化したものを2次マイクロと分類されます。奈佐の浜で確認できるプラスチックの例としては、多様なプラスチック製品が断片化したものや、発泡プラスチック片、さらには、徐放性肥料プラスチックやレジンペレット、人工芝片などがあります。それらは、主として伊勢湾流域の河川から伊勢湾にもたらされたものであり、国内(東海三県)での発生ゴミです。そのため、当地域でのプラスチック等の使用を削減することは、伊勢湾内及び奈佐の浜のゴミ削減に直接関係するといえます。

さらにプラスチックゴミは、河川を通して海洋にもたらされますが、プラスチックは、徐々に細分化することで、海洋生物の体内に取り込まれ、食物連鎖の中で生体濃縮するとのことでした。実際にも魚類の体内からもマイクロプラスチックが抽出された事例が報告されており、食の安全にも影響することが指摘されています。今後もプラスチック製品の削減が進まない場合には、将来的には、微小化したプラスチック片が大気中にも浮遊し、PM2.5の問題のように大気中の微小化プラスチックが問題となる可能性も指摘がされました。

⑶ 鳥羽市リサイクルパークの視察においては、行政主体での生ごみ堆肥の仕組みづくり、地域のゴミ問題等についてレクチャーを受けました。生ごみによる堆肥作りについては、行政主体である程度の大きさの規模で行うことは珍しく、鳥羽市リサイクルパークには、国内だけでなく、海外からも多数の視察が訪れるとのことでした。ゴミ減量の取組として、他の自治体や地域でも非常に参考になる取組といえるものといえます。

↓奈佐の浜で確認された、細切りのプラスチックごみ

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