対策本部ニュース・タイトル.jpg会長声明

いわゆる「共謀罪」法の成立に抗議する会長声明

 平成29年6月15日、いわゆる「共謀罪」規定を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下、「共謀罪法案」という)が参議院にて採決が強行され成立した。

 当会は、本年4月6日に『いわゆる「共謀罪」法案の廃案を求める会長声明』を出して、街頭宣伝活動を行い、5月27日には約1300名の参加を得て「共謀罪法案の廃案を求める集会パレード」を実施し、法案の廃案を目指して運動を行ってきた。

 衆議院及び参議院の審議において、政府は、277の対象となる罪にテロとは関係がない罪が多数含まれているのではないか、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結は「共謀罪」の新設をしなくても条約締結ができるのではないか、共謀罪法案の構成要件とされる「団体」「計画」及び「準備行為」の特定が不分明ではないかなどの点につき十分な説明をしておらず、「共謀罪法案」は、その審議の過程において、刑罰法規の基本である立法事実の確定がなく、刑罰の構成要件が不分明で罪刑法定主義にも反することが明らかになっている。

 国民の多くが「共謀罪法案」に対して反対の声や疑問の声を上げるなかで、5月23日の衆議院に続き、6月15日参議院で採決が強行されて、「共謀罪」法が成立したことは、日本の刑罰法体系に取り返すことができない禍根を残すばかりか、警察による社会の監視が日常化し、市民の運動・活動や企業・団体の活動に重大な萎縮をもたらし、人権の根幹である思想良心の自由が侵される危険を高める。

 当会は、この「共謀罪」法の成立に対し満腔の抗議をし、今後も同法の廃止を求めて継続的な活動をおこなうことを決意する。

          2017(平成29)年6月15日

          愛知県弁護士会  会長  池 田 桂 子

報  告

「市民を監視する法律はいらない!」―共謀罪法案の廃案を求める集会・パレード―

(5月27日 於 名古屋・栄 エンゼル広場)

秘密保護法対策本部  委員  浮 葉   遼

1 はじめに

 政府は、過去3度も「共謀罪」創設に向けた法案を国会に提出しているが、3度とも廃案となった。ところが、問題を克服しないまま名前を変えて、4度目の法案を提出した。そこで、当会が主催者として、5月27日、久屋大通公園のエンゼル広場にて、共謀罪法案の廃止を求める集会・パレードを開催した。弁護士110人を含む約1300人の市民に参加いただき、新聞やテレビでも大きく取り上げていただいた。

2 リレートーク及びメッセージ

 まずは、池田桂子会長。審議すればするほど疑問が湧いてくる法案に、強く反対すると決意を表明した。

 続いて、名古屋大学大学院法学研究科教授(憲法学)の本秀紀氏。共謀罪が制定されると、監視や密告を恐れることで、他人と関わることに消極的になる。その結果、人との繋がりが断たれてしまう。

 次に、日本キリスト教団名古屋中央教会牧師の草地大作氏。共謀罪は、同教団の牧師124人が逮捕された戦前の治安維持法の復活だ。過去の弾圧事件を繰り返させてはいけない。

 また、元駐中国大使の丹羽宇一郎氏からは、心の中にまでストーカー、探偵者がはびこり、声なき声の市民を含め国民主権、基本的人権の根幹を奪おうとする共謀罪法の神髄が見え隠れしている、声なき声は賛成となる、声をあげようと、メッセージが寄せられた。

 大塚耕平参議院議員、近藤昭一衆議院議員、島津幸弘子衆議院議員からもスピーチがあり、共謀罪法案は、普通に生活していれば関係ないと考えるのは間違いである、罪となる実行準備行為が不明確なので内心の自由の侵害に繋がる、秘密保護法、共謀罪法案ときて、日本が暗黒郷になりつつある、冤罪が増えるおそれがある、共謀罪法案は権力が民を監視する社会の礎となる、など様々な問題点が鋭く指摘されました。また、ビジネス弁護士の声明が代読され、謀罪法案の対象に金融商品取引法のインサイダー取引、法人税法の偽りにより税を免れる行為、特許権侵害などビジネスに関わる罪を入っており、節税のための勉強会が組織犯罪集団に該当する可能性があり、弁護士もインサイダー取引に該当しないと意見書を出して国と見解が異なれば、弁護士も共謀罪で起訴することができるなどと、ビジネスへの脅威に警鐘を鳴していると紹介された。

3 パレード

 花井本部長代行の出発宣言の後、池田会長を先頭に横断幕やプラカードを手に栄のデパート群を行進し、「共謀罪反対!」「市民を監視する法律はいらない!」などと沿道の市民に訴え、午後3時30頃に終了した。

4 おわりに

 6月15日、法案が参議院で採決強行されて「共謀罪」法が成立したが、当本部は「共謀罪」法の廃止を求める活動をさらに継続する。