当会では、2015年10月13日の常議員会決議において、「愛知県弁護士会 男女共同参画推進施策基本大綱」(以下「大綱」という。)が定められ、当会における男女共同参画の推進を組織的横断的に行うため、男女共同参画推進本部が設置された。

 その後、大綱で定められた指針に基づき、会内の男女共同参画を実現し、ジェンダー(社会的性別)に基づく性別役割分業意識・固定観念・偏見を排除し、さらに社会全体の男女共同参画の推進のために積極的に取り組むべく、2017年5月30日の定期総会決議において「愛知県弁護士会 男女共同参画推進基本計画」(以下「第1次基本計画」という。)が策定された。

 第1次基本計画では、次の3つの柱について、それぞれ具体的な目標を設定し、その目標のための具体的施策を実現すべく、継続的に取り組んできた。

① 女性会員の会務参加の促進

② 女性会員・女性修習生に対する差別是正と活躍の場の拡大

③ 男女を問わない弁護士のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)

 第1次基本計画では、策定から5年後を目途に検証結果をふまえ男女共同参画基本計画(第2次)を策定するものとされている。

 そこで、第1次基本計画で定められた各目標・具体的施策の達成状況の検証結果に基づき、男女共同参画の推進の取り組みをさらに強化すべく、あらためて「愛知県弁護士会 第2次男女共同参画推進基本計画」(以下「第2次基本計画」という。)を策定する。

第1 女性会員の会務参加について

1 目標・具体的施策

(1)会長については、今後10年間において、少なくとも2名程度、女性会員が含まれることを目指す。

 会員に対して、上記目標を周知するとともに、協力を得るような施策を行っていく。

 また、女性会員が広く委員会に参加し、委員長に就任できる意識・意欲の醸成に努める。

(2)副会長(毎年合計5名)については、女性会員が毎年1名以上含まれるとともに、2年に1回程度の割合で女性会員が2名以上含まれることを数値目標とする。

 会員に対して数値目標を周知し、協力を得るための施策を引き続き行う。また、副会長職の負担軽減のための会務の合理化・効率化の具体的方策を検討する。

(3)常議員については、引き続き、女性会員の割合が30%以上になることを数値目標とする。

 会員に対して、数値目標を周知し、協力を得るための施策を引き続き行う。また、オンライン開催等常議員会の開催方法につき負担軽減のための方策を検討する。

(4)法定委員会(資格審査委員会・懲戒委員会・綱紀委員会)の正委員については、女性会員の割合が毎年30%以上になることを数値目標とする。なお、予備委員についても正委員同様、女性会員の割合が毎年30%以上になることを数値目標とする。

 法定委員会の女性会員割合については、数値目標の周知をし、改選期における協力を求めていく。さらに、予備委員を経て正委員となる場合があることから、予備委員においても女性会員割合が30%となることを周知する。

(5)前項以外の委員会等(本部・協議会・プロジェクトチーム等を含む。)の委員については、数値目標を設定しないが、女性会員の積極的参加を阻害する要因を調査・検討し、女性会員が積極的に参加できる環境を整備する。

(6)委員会等の正・副委員長については、当会の女性会員の割合程度になることを目指す。

(7)女性会員が理事者(会長・副会長)や常議員に就任すること、並びに委員会活動を行い、委員会正副委員長になることに対して、女性会員の実情を踏まえた多面的な環境整備の施策を進める。

(8)女性会員の会務活動を促進するため、当会の女性会員数の維持・増加に向け、毎年度イベントを実施して女子学生・生徒に対して女性法曹との交流を通じて仕事や生活について伝え、興味・関心を養成して次世代の育成・増大に努める。

2 趣旨・基本的考え方

(1)会員総数に対する女性会員の割合の推移(外国特別会員を除く)

 第1次基本計画策定時の2017年度から2022年度までの会員総数に対する女性会員の割合の推移は、19.55%、19.61%、19.41%、19.29%、19.57%、19.72%であり、ほぼ19%台横ばいの状況である。

 一方、女性会員の期別構成をみると、2019年度から2021年度までの61期以降の女性会員の割合は、22.7%、22.1%、22.09%と22%台であり、上記全会員数に対する割合に比べ高くなっている。

(2)会長・副会長について

 第1次基本計画策定以降の5年間において、女性会長は2017年度に、女性副会長はそれぞれ2名・1名・2名・1名・1名・1名で推移している。

 会長は、毎年1名の選出であるため、毎年の数値目標設定にはなじまないが、第1次基本計画以降、2年に1度は2名の女性副会長が選出されており、会務経験豊富な女性会員が候補者となり得る土壌も醸成されていく兆しが見えることから、今後10年間において女性会員が複数名選出されることが望ましい。

 副会長については、第1次基本計画策定後、複数名が選出されている年度が2期あったことに加え、副会長候補者の修習期が今後60期代を迎えることが予想されるところ、上記61期以降の女性会員の割合は、会員全体における女性会員の割合よりわずかに高い22%台を推移している。このような実情をふまえ、2年に1回程度の割合で女性会員が2名以上含まれることを目標とする。

(3)常議員について

 第1次基本計画策定後、5年間では、22.5%、30%、30%、27.5%、32.5%、37.5%と推移し、30%の数値目標が達成され維持されている。常議員についても、数値目標の周知が奏功していると考えられるので、引き続き周知することに加え、オンライン化など負担軽減策を検討していく必要がある。

(4)法定委員会の委員について

 第1次基本計画策定以降、懲戒委員会については改選期である2020年度に目標を達成したが、資格審査委員会・綱紀委員会については、目標には届いていないため、第1次基本計画の数値目標を維持するとともに、正委員の候補となり得る予備委員についても、女性会員の割合を30%以上とする数値目標を掲げる。

(5)前項以外の委員会の委員について

 2022年度においても、女性委員の割合が当会の女性会員の割合に満たない委員会がほぼ半数ある。女性会員の委員会への積極的な参加を促すため、参加を阻む要因を調査・検討し、女性会員の委員会への積極的参加の方策としてオンラインの方法による開催を引き続き行い、開催時間の短縮化・合理化等を実施するなど、環境を整備していく必要がある。

(6)委員長・副委員長について

 委員会における正・副委員長への就任が進むことにより、女性会員の会務に対する意識が高まり、理事者に占める女性会員の割合が高まるものと期待される。したがって、正・副委員長の総数に占める女性会員の割合が当会の女性会員の割合程度となることを数値目標とする。

(7)女性会員比率の維持・増加の必要性

 上記(1)のとおり、当会における女性会員比率は、ほぼ横ばいである。

 この現状に鑑みると、既に弁護士となった女性に対して会務参加を促進する施策を実施するだけではなく、女性の法曹志願者を増やし、当会に入会して会務の担い手となる女性弁護士数を増やさなければ、女性会員の会務参加の促進という目標の安定的で恒久的な実現は困難である。

 以上より、第1次基本計画にはなかった「当会の女性会員比率の維持・増加」を、新たな具体的目標として加える。

 当会では、上記目的を達成するための施策として、2019年から毎年、主として中部地方の女子中高生を対象に、女性の法曹三者からキャリアや仕事のやりがい、ワーク・ライフ・バランス等について話を聞き、また少人数で直接話をすることができるイベント「あつまれ!リーガル女子」を実施し、実施後のアンケートにおける満足度も高く、相当程度の効果を上げていることから今後も継続的な実施が必要である。

第2 女性会員の性別による業務上の障害の解消と活躍の場の拡大

1 目標・具体的施策

(1)女性会員の性別による業務上の障害を解消し、女性会員が十分に活躍できる条件の整備を図る。

① 女性会員サポート窓口の周知を徹底し、女性会員への業務妨害に対するサポート体制を強化する。

② 金融機関、法務局、裁判所等における職務上の氏名使用の可否についての実情把握に努め、日本弁護士連合会と連携して職務上の氏名を使用できるようにするための活動を推進する。

(2)女性会員の社会における活躍の場を拡大する方策を検討する。

① 当会会員が5名以上所属する法律事務所のうち、所属する女性会員の割合が20%に至っていない法律事務所に対して、すみやかに所属する女性会員の割合が20%となるよう働きかける。

② 企業及び経済団体に対して、当会の社外役員名簿(女性名簿・男女混合名簿)の周知及び利用促進のための活動を行う。

2 趣旨・基本的考え方

(1)女性会員の性別による業務上の障害の解消

① 女性会員への業務妨害

 2016年8月に実施した会員アンケートにおいて、回答した女性会員の4人に1人が業務を妨害されたり、それを見聞きしたことがあったという結果を踏まえ、2019年4月より、女性会員サポート窓口を設置した。女性会員への業務妨害その他の女性会員の職務及び業務に関して生じた問題について、弁護士経験豊かな会員が相談に応じるものであったが、2019年度、2020年度において、利用実績がなかった。

 そこで、2021年1月、女性一人事務所の経験がある女性会員と懇談し、実情をヒアリングしたところ、女性会員に対する業務妨害は依然、存在していたものの、業務に関して生じた問題については自分に責任があると思いがちで相談しにくく、深刻さの度合いによって受けたいサポートも様々であり、その他の相談窓口との連携が必要であること、そもそも女性会員サポート窓口の存在が周知されていないなどの問題点を把握した。

 潜在化している業務妨害への対応のために、業務妨害対策委員会や若手会員育成支援特別委員会等との連携を図るとともに、女性会員サポート窓口の周知を徹底していく必要がある。

② 職務上の氏名の使用について

 懇談会等で、金融機関等において女性会員が職務上の氏名を使用するにあたり、多くの困難を抱え、業務に対する障壁となっている実情が明らかになっている。このため、金融機関、法務局、裁判所等における職務上の氏名使用の可否についての実情把握に努め、日本弁護士連合会と連携してその解消に向けての取組を進める必要がある。

(2)女性会員の社会における活躍の場の拡大について

① 法律事務所の女性割合について

 この5年間に、5名以上の法律事務所のうち、女性会員の割合が20%以上を達成している事務所が半数程度に上った。これは、当該目標を各事務所宛に要請し、各事務所で目標の理解が進み、実際に対応された結果である。多数の事務所において目標を達成されるよう引き続き要請をしていく。

② 女性会員の推薦

 自治体、裁判所、その他の団体に当会が推薦した女性会員の、任期中の委員等における割合は、これまで5年間にいずれも30%以上となり数値目標を達成できた。加えて、各団体から「(可能ならば)女性を」との推薦依頼がなされることが少なからず見受けられ、依頼に対応した結果、数値目標を継続して達成できた。

 したがって、女性会員の推薦依頼については、目標達成のため、引き続きの数値目標を設けることはしない。

③ 社外役員名簿

 女性会員の社会における活躍の場を拡大する方策として、研修を要件とした社外役員の名簿(女性名簿・男女混合名簿)を作成し、これを2019年4月1日から請求者である企業等に提供している。

 ただ、企業等からの請求件数は2019年度が8件(就任件数-0件)、2020年度は2件(就任件数-1件)、2021年度は2件(就任件数は2件)という状況で、請求件数が減少しているだけでなく、社外役員名簿に基づく就任件数も低調である。

 そこで、当会の社外役員名簿の周知を図るため、2023年3月頃までに当会の社外役員名簿を当会のホームページに掲載する予定である。そして、直接、企業や経済団体に対して、ダイバーシティ(多様性)の意義やその重要性への理解を促すなど、当会の社外役員名簿の周知及び利用促進のための活動を行う。

第3 差別的取扱い等の防止

1 目標・具体的施策

(1)規則等の内容及び苦情相談窓口の周知・研修の実施

 当会の活動、会員等の職務・活動、職員の職務に関連する行為によってセクシュアル・ハラスメント及び性別による差別的取扱い(以下、「差別的取扱い等」と総称する。)がなされることのないよう、「性別による差別的取扱い等の防止に関する規則」、同細則、同指針の内容及び苦情相談窓口の存在を、引き続き会報、ホームページ、ちらし、パンフレット、アンケートの実施等により、定期的に広報し、周知を徹底する。

 毎年実施している職員向け研修、新理事者向け研修、会員向け義務研修を継続するとともに、苦情相談窓口への相談やアンケート結果等も踏まえて、さらに他の機会や方法による研修を実施することについても検討する。

(2)司法修習生に対する差別的取扱い等の防止

 毎年実施している差別的取扱い等の防止に関する司法修習生向けアンケートの結果等の分析も踏まえて、修習生に関わる当会、会員、職員が司法修習生に対して差別的取扱いをすることのないよう、研修等による意識の啓発を図るなど差別的取扱い等を防止するための取組を実施するとともに、司法修習生への苦情窓口制度の周知を徹底する。

(3)性的指向・性自認に関する嫌がらせ・差別的言動の防止

 性的指向・性自認に関する嫌がらせや差別的言動がなされないよう、ホームページ、ちらし、パンフレット等の作成や研修にあたっては、多様な性に関する知識の啓発に努める。

2 趣旨・基本的考え方

(1)第1次基本計画策定後、当会は、2018年3月にセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規則」(2009年5月施行)を廃止し、セクシュアル・ハラスメントに加えて生物学的又は社会的な性差を理由とする差別的取扱いについても防止するための「性別による差別的取扱い等の防止に関する規則」、同細則、同指針を制定し、差別的取扱い等の発生を防止するとともに、万一、問題が生じた場合には、被害者のプライバシーを保護しながら、当会として適切にこれに対処することができるよう、苦情相談窓口を設置して、差別的取扱い等の防止を図ってきた。

(2)しかしながら、アンケート調査等によると、会員や職員、司法修習生に対する差別的取扱い等が依然として存在しており、防止が図れていない。また、苦情相談窓口の周知は、一定程度進んできているものの、未だ十分ではなく、アンケート調査において、被害を受けたり、見聞きしたと回答した人が「利用したことがある」との回答は皆無であった。

 そのため、継続して広報などにより「性別による差別的取扱い等の防止に関する規則」等の内容及び苦情相談窓口の周知を図るとともに、研修をより充実させ、意識の啓発を図り、一層の防止に努めながら、苦情相談窓口を安心して利用してもらえるようにすることが必要である。

(3)性的指向・性自認に関する嫌がらせ・差別的言動の防止

 性的指向・性自認等に関する嫌がらせ・差別的言動についても、「差別的取扱い等」に当たるものであり、禁止の対象である。にもかかわらず、アンケート調査等において、性的指向・性自認等に関する嫌がらせや差別的言動の存在が、指摘されている。

 差別的取扱い等の防止のためには、多様な性のあり方及び性的指向・性自認等に関する嫌がらせ・差別的言動に関しても理解を深めることが必要であることから、この点を意識した広報、研修等を行う。

第4 弁護士のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)について

1 目標・具体的施策

(1)育児と仕事の両立

① イクサポMLに関し、メーリングリストを活性化していく方策を検討する。

② 状況に応じた保育のあり方につき会員の要望を調査し、保育業者との提携・紹介など、会としての支援策を検討する。

③ 会員休憩室の存在について、会員への継続的な周知を図るほか、より広く有効に会員に利用される方策を検討する。

④ 育児期間中の会費免除制度について、業務要件等の見直しを検討する。

(2)メンタルへルスと仕事の両立

① 会員のメンタルヘルスに繋がる当会の各種相談窓口について、パワーハラスメントへの対応も含め、関連委員会と連携しながら、体制のあり方、周知・利用促進の方法を検討する。

② メンタルヘルスに特化した専門家による研修を継続的に実施する。

(3)介護と仕事の両立

① 介護と仕事に関する専門家の研修や、体験談等を紹介する形で、会員に対し継続的に情報発信を行い、介護の実態に対する会員の理解を深める。

② 離職防止に繋がる支援策を検討する。

(4)会員に対する有用な情報提供

① 休業等や復職後の勤務条件も含め、他事務所での勤務条件や働き方についての工夫例や体験談等、勤務弁護士の立場から求められる情報をより多く収集した上で、新入会員のガイダンス等において、継続的に情報提供していく。

② 在宅ワークやIT化,短時間勤務など、法律事務所での弁護士の多様な働き方についての工夫例を収集し、会員に情報提供していく。

③ 同じ事情を抱える弁護士間で情報を交換・共有できる企画を積極的に進め、会員間のネットワーク作りを支援していく。

(5)会務負担軽減・効率化のための方策

 オンラインによる会務・研修の参加手段を、会員のワーク・ライフ・バランス確保、会務負担軽減のための恒常的な選択肢としてより積極的に利用できるよう、オンライン化されていない会務(常議員会・総会等)・研修(eーラーニングのコンテンツ等)について、オンライン化の拡大に向け引き続き検討する。

 会員が会務に対し負担を感じる要因、それを除去するための環境整備を具体的に分析しながら、すべての会員が会務に積極的かつ柔軟に参加できる方策を検討する。

(6)業務引継・共同受任システム等の具体的構築

 休業等の場合の業務引継・共同受任・登録取消・復帰等に関し、名簿作成・ネットワークの構築・マッチングも含め、会員の休業・登録取消・復帰等に関わる悩み・不安を相談できるサポート体制の具体的制度設計の構築に着手する。

2 趣旨・基本的考え方

(1)第1次基本計画の検証

 会員のワーク・ライフ・バランスが健康的に保たれることは、会員が性別に関わりなく、その個性と能力を十分発揮しながら、充実した仕事(弁護士会の会務を含む)を継続して行う前提であり、当会全体として取り組むべき課題であるとの観点より、当会では、会員のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に関して、第1次基本計画において、6つの具体的目標を立て施策実現に取り組んできた。

① 休業等の場合の業務引継・共同受任のシステムについては、各種懇談会において、これを求める会員の声は多数あり、その必要性が当会においても認識されたが、当該システムに対する具体的な検討には未だ至っていない。

② 休業等の場合に役立つ有用な情報提供に関しては、弁護士のワーク・ライフ・バランス全般に亘って役に立つ情報、体験談等を掲載したハンドブックを作成して会員へ広報した。今後は、アンケート等により勤務弁護士から特に要望の多かった、事務所内での休業等の場合の勤務条件の定めについての情報をより多く収集し提供していくことが望まれる。

③ 休業等の場合に会務・研修参加を容易にする方策については、コロナ禍でZoomによる会務・研修のオンライン化が進み、会員が業務・休業等の事情と調整しながら自己のワーク・ライフ・バランスを確保するための方策として、効果的な方法であることが認識された。

 今後は、コロナ禍や休業等の事情に拘わらず、会員が自己のワーク・ライフ・バランスを確保するための恒常的な選択肢として、オンラインによる会務・研修の参加手段をより積極的に利用できるよう、オンライン化支障の原因を取り除き、未だオンライン化されていない会務・研修への拡大適用・促進を図る必要がある。

 同じ事情を抱える弁護士間で情報を交換・共有できる方策の1つとして、仕事と子育てを両立させるノウハウ等の情報交換を目的としたメーリングリスト(イクサポML)を立ち上げたが、一時的な情報提供に止まり継続的な情報発信や意見交換の場として有効に利用されていない。さらに、育児以外の事情については情報交換の場はないとの課題がある。

④ 育児と仕事の両立について、

(ⅰ)子の一時預かり保育については、裁判・調停期日へのWeb導入、電話会議の利用、会務や研修のオンライン化により、会員の考え方や需要が大きく変化したことが予想されることから、状況に応じた保育のあり方について、あらためて会員の要望を調査し、支援策を再検討する必要がある。

(ⅱ)女性会員休憩室については、室内の備品を増やすなどの改善をしたが、継続的な周知徹底の方法は十分ではなく、有効利用には至っていない。

(ⅲ)育児期間中の会費免除制度については、免除期間(8ヶ月→10ヶ月)、子の対象年齢(2歳→3歳)を延長する旨の改正規程が2019年10月より実施されたこともあり、制度開始時に比し利用実績が大きく伸び、育児との両立のために会員に広く利用されている。ただし、日弁連と異なる業務要件の存在のため、会員からは利用しづらいとの声も挙がっており、今後の検討課題となっている。

⑤ 会員のメンタルヘルスについては、アンケート調査等で、多くの会員が、業務や会務とのワーク・ライフ・バランスに関し悩みや不安を抱えており、その中には、パワーハラスメントの事案が含まれている実態も明らかになった。そのため、先進的取組を行っている他会から得た情報も参考に、会員のメンタルヘルスに繋がる当会の各種相談窓口について、2021年より関連委員会と懇談会を定期的に行い、周知や利用促進を図るための方策について意見交換を行った。今後も、引き続き、相談窓口の周知や利用促進のための方策を検討する。

 上記と並行して、専門家によるメンタルヘルスの研修をこれまでに2回実施し好評であったことから、今後も引き続き専門家による研修を継続して実施する。

⑥ 介護に関しては、前記ハンドブック(介護の章)において、広く会員に情報提供した他、認知症への対応、介護離職防止に関し研修を行った。さらに、仕事と介護の両立のためのアンケートにおける結果や介護に直面する会員の体験談を会報に掲載した。今後は、アンケートで会員から要望の多かった継続的な情報発信を行う中で介護の実態に対する会員の理解を深め、離職防止に繋がる支援を検討する必要性がある。

(2)第1次基本計画の項目に含まれない新たな問題・視点

① 第1次基本計画では、主に休業等の事情を抱える会員への情報提供を検討してきたが、多様な働き方、IT化の流れの中では、法律事務所での「多様な働き方」の工夫例や、勤務弁護士に対する勤務条件などの情報が、休業等の事情に拘わらず、広く会員から求められている。

② さらに、休業等の事情に拘わらず、特定の会員に会務負担が偏りワーク・ライフ・バランスを崩す例も認められる。会員が会務参加に負担を感じる要因、それを除去するための環境整備を具体的に分析しながら、会員がワーク・ライフ・バランスを保ちながら会務に積極的かつ柔軟に参加できる方策を、新たに検討していく視点が必要である。

(3)上記観点より、第2次基本計画を以下のように再構成した。

 まず、育児、メンタルヘルス、介護につき、特有の具体的目標を、第4の1(1) ~(3) に掲げた。さらに、弁護士のワーク・ライフ・バランスの実現のためには、休業等の事情の有無に拘わらず、特に、勤務弁護士の立場からの勤務条件、法律事務所での多様な働き方、同じ生活上の事情を抱える弁護士間において、自己の働き方等の選択肢のヒントとなる多様な情報が求められていることから、それらを第4の1(4) 会員に対する有用な情報提供についての項目にまとめた。さらに、今日的課題である第4の1(5) 会務負担軽減・効率化のための方策を新たな項目として掲げた。第4の1(6) 業務引継・共同受任のシステム構築は、第1次基本計画策定時からの重要課題であり会員の需要がありながら、未だ具体的な着手には至っていない項目であったため、引き続き第2次基本計画の大きな柱として掲げた。

第5 第2次基本計画の実現に向けて

1 女性会員の意見を聞く会

 理事者は、毎年1回以上、女性会員の意見を直接会務に反映させるために、女性会員の意見を聞く会を開催する。

2 基本計画の実施状況の検証と報告

 男女共同参画推進本部において、毎年、第2次基本計画の実施状況を検証し、

(1)定期総会において毎年その結果を報告する。

(2)会報、男女共同参画推進本部ニュース等において、毎年その結果を報告する。

3 男女共同参画推進基本計画(第3次)の策定

 第2次基本計画の実施状況を踏まえて、第2次基本計画策定から5年後を目途に、当会の男女共同参画推進基本計画(第3次)を策定する。

以上

(令和5年3月23日臨時総会決議)