【法律豆知識】借家からの立ち退きについて(借地借家法の保護−正当事由)
 7,8年前から,商店街にある店舗を期間5年の約束で八百屋さんに賃貸していますが,店舗が古くなったこともあり,これを取り壊して商業ビルを建てたいと思っています。次の期間満了時に契約を更新せず,立ち退いてもらいたいと思っていますが,可能でしょうか。
 建物の賃貸借契約については,借地借家法の保護があり,契約上定められた期間が満了しても,それだけでは,借家人に立ち退いてもらうことはできません。まず,前提として,次の契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に,借家人に対して,契約を更新しない旨の通知をしなければなりませんし,さらに,契約を更新しないことについて,「正当事由」のあることが必要とされています。
 この「正当事由」があるかないかの判断については,貸主の側の事情だけでなく,借主側の事情も当然考慮されることになり,その双方が建物の使用を必要とする事情のほか,建物の賃貸借に関する従前の経過,建物の利用状況及び建物の現況などが考慮されます。さらに,いわゆる立退料の提示があった場合には,そのことも考慮して判断されることになります。
 ご質問の場合については,一概には言えませんが,商業ビルを建てたいという貸主側の事情があっても,借主側が営業上その建物の使用を必要とする事情がより重く見られることになると思われます。店舗が古くなったというのも,老朽化して倒壊の危険があるような場合であればともかく,通常の使用上特に差し支えがない程度のことであれば,「正当事由」があるとはなかなか認めてもらえないでしょう。
 従って,ご質問の場合については,強制的に明渡を求めるというよりは,新築する商業ビルへの入居や相当額の立退料の支払い等,借主が納得できる条件を提示して,話し合いによる解決を目指す方が,得策ではないかと思われます。
 なお,借地借家法では,上記のような通常の賃貸借契約のほか,「定期建物賃貸借」といって,更新がない契約をすることも認められていますので,参考に付け加えます。

(平成19年度掲載)

愛知県弁護士会 名古屋法律相談センター 

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