【法律豆知識】性格の不一致を理由とする離婚について
 性格の不一致を理由とする離婚は認められるでしょうか。
 もちろん夫婦が離婚に合意できる場合はよいですが、問題は、夫婦の一方が「性格の不一致」による離婚を迫ったが、他方が離婚に応じない場合に、裁判によって離婚が認められるかどうかです。
 裁判になった場合、離婚を求める側から主張される理由の中に、「性格の不一致」はとても多いのですが、それだけの理由で直ちに離婚が認められるケースはほとんどありません。なぜなら、性格の不一致だけでなく他の原因が複雑に絡んでいる場合が多いのです。
 少々性格の不一致があっても、互いの努力で円満な結婚生活を継続している例は多いのです。
 裁判で問題になるのは、「性格の不一致」が民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかです。性格の不一致により、婚姻生活が破綻し、修復不能の状態に陥ってしまっているかどうかが問われるのです。
 裁判例としては夫から、いわゆる「性格の不一致」による離婚請求が提起された事案において、一審の東京地裁は、婚姻生活の破綻は、主として夫側のわがままに基づくものとして、離婚請求を認めませんでした。ところが、控訴審の東京高裁は、破綻の最大の原因は生活観・人生観(いわゆる性格の不一致)にあるとして夫側の離婚請求を認めたのです。このケースの場合は2人の性格の不一致は重大でやりきれないものとして、結婚生活を継続出来ないと認定したものです。
 子どもの教育を巡り、夫婦が対立し、妻は夫を見ると心臓が波打つ状態になったとして離婚訴訟を提起し、妻の訴えが認められたものがあります。夫の側は真面目に妻子のために働いてきたのになぜと納得がいかなかったのですが。
 人生80年時代を迎え、妻の方も身体が弱り、夫に合わせられなくなったという場合、もうこの人とは別れたい、私は私の人生を生きたいという場合妻から離婚請求をするといったケースも増えています。そのような場合、夫はなぜ、離婚を請求されるのか理解出来ない場合も多い様です。
 いずれにせよ、破綻主義(結婚生活が壊れて修復不能になった場合は離婚を認める)傾向にある裁判所の動向から見て今後、性格の不一致による離婚は増えることが予想されます。

(平成19年度掲載)