不安を煽る訪問販売には十分注意が必要


     増加する悪質リフォーム被害

          高齢者は家族に相談を
             後見制度、クーリングオフ活用も



 悪質リフォームが問題になっているようです。
 祖母の友人が被害に遭ったとの話を聞いた法学部生の大介が弁護士を訪問しました。
 
大介

 最近、よく悪質リフォームに関する新聞記事を見るのですが、どんな事例が多いのですか?

弁護士

 「床下を点検させてください」と言って家に上がり込んで、耐震補強だなどとやたら金物を取り付けていったり、「湿気で柱が腐っています」と言って大量の調湿剤を蒔いていく「点検商法」、最初は屋根、次は壁、さらに水回りなどと次から次へと工事を押しつける「次々販売」などの被害が目立ちますね。
 被害金額も数百万円から、ひどいケースは複数の業者がよってたかっていくつもの工事を行って総額数千万円というケースもあります。

大介

 何でそんな被害が起きるのでしょうか?

弁護士

 誰しも地震で家が壊れないかなどと建物の安全性に対する不安を持っていると思いますが、業者はそこにつけ込んでくるのです。それに耐震補強などと言われても、一般に消費者は工事の内容や価格の相当性についての知識がありませんので、「建物が危ない」と言われれば、つい勧誘に応じてしまうのではないでしょうか。背景に、高齢者世帯の孤立化、信販会社の安易な加盟店契約と過剰な融資といった原因があるでしょうし、また、法規制の不備も問題です。

大介

 どんな点が問題なのですか? 

弁護士

 建設業者は、建設業法で国土交通大臣や都道府県知事の許可を受けなければならないのですが、これは工事金額が500万円以上の場合だけで、500万円に満たない工事は許可がいらないことになっているんです。リフォーム工事の大部分は500万円未満ですので、リフォームは許可を受けていない業者でも自由にできてしまうのです。また、建築基準法上の規制からも外れていて、資格のある建築士が関与していなくても法律上は問題がないとされています。

大介

 悪質リフォーム業者かそうでないかを見分ける方法はないんですか?

弁護士

  この手の業者は訪問販売の形を取ってセールスをしてきます。突然、家にやってきて、その家に住んでいる人の不安な気持ちを煽って、すぐ工事をしなければ危ないなどとその日のうちにも契約を迫ってきます。
 突然家に来てすぐ契約を迫ってくるような業者には警戒が必要でしょうね。

大介

 どういう点に気を付ければいいのでしょうか?

弁護士

 工事を勧められても即決しないということが一番です。必ず一人では決めないこと、他人に相談すること、もし工事をするにしても複数の業者に見積をしてもらうことなどが必要です。 

大介

 もし、悪質リフォーム業者に引っかかってしまったらどうしたらいいのですか?

弁護士

 工事をされてしまった後でも泣き寝入りすることはありません。
 まず、クーリングオフによる取消し、それから特定商取引法や消費者契約法の不実告知による取消し、詐欺取消し、錯誤無効などによって契約の効力を否定することが可能な場合が多いのです。
 もし、クレジットを組んで支払中の場合には、そのクレジット会社に対して、悪質業者に主張できる抗弁をそのまま主張して、クレジット代金の支払を拒むことができます(抗弁の接続といいます)。

大介

 クーリングオフの場合、工事から日にちが経ってしまっている場合はどうですか?クーリングオフは確か期間が限定されていましたよね。

弁護士

 よく知っていますね。確かに、クーリングオフは、書面を受領してから8日間とされています。
 でも、8日を過ぎてもあきらめる必要はありません。「書面を受領してから」8日間ですので、そもそも書面を受領していなければいつまでもクーリングオフが可能です。また、書面を受領していても、法律上、その書面の記載事項が事細かに規定してあって、書面に記載されている内容に嘘があったり、不備があった場合にも、やはり「法律の要件を満たした」書面を受け取ったことにはなりませんから、この場合も8日間は進行しません。
 さらに、業者がクーリングオフを妨害するような行為をした場合もクーリングオフは可能です。

大介

 被害者はやはりお年寄りの方が多いのですか?

弁護士

 そうですね。高齢者の被害が目立ちます。被害に遭ったご本人に被害意識が薄いことも多く、家族や地域の人が注意してあげる必要があるでしょうね。
 また、判断能力が不十分だと思われるような場合には、成年後見制度を利用してもらうことも考える必要があると思います。

大介

 最後に、被害に遭ってしまった場合には、どういったところに相談に行けばいいのですか?

弁護士

 弁護士会の法律相談や、消費生活センターなどに相談するのがよいと思います。

大介

 ありがとうございました。

 

(参考リンク:最近の消費者関係事件「点検商法について」