破産の相談 その1
総務課長

君宛にサラ金から頻繁に電話がかかって来るんだけどもどうしたんだ?

社員A

実は、借金がたくさん増えてしまって。サラ金一〇社から四〇〇万円ほど借りています。その返済ができなくて、そのためにサラ金から督促があるんだと思います。会社に迷惑をかけて申し訳ございません。

総務課長

だいたいどれくらいの金利なんだ?

社員A

二五%から二九・二%です。

総務課長

年二五%だとして、四〇〇万円借りているということは、一年間で一〇〇万円も利息を払うことになるのか。そうすると、利息だけでも一ヶ月で八万円ずつ返していかなければならないわけか。君の給料は確か二五万円位だったと思うが、それでは返せんわな。

社員A

なんとかやりくりしていて、借金返済のためにまた他のサラ金から借りるという風になってしまったんです。

総務課長

まさに借金地獄、アリ地獄だな。弁護士さんに相談してみたかね?

社員A

弁護士さんに相談するとお金がかかるとか言われてますので、まだしていません。

総務課長

この間、新聞で見たけれど、三〇分で五二五〇円の相談料らしい。名駅3丁目にある大東海ビル9階に相談センターができて、夕方五時過ぎでもやっているそうだから一度電話で予約してみたらどうかね。

社員A

分かりました。早速行って参ります。



〜弁護士会の法律相談センターにて〜


弁護士 どうされましたか?

社員A

サラ金一〇社から四〇〇万円ほど借りています。私は妻と子供二人の四人の家族で月額の家賃が六万円の賃貸マンションで暮らしています。毎月の手取りの給料は二五万円くらいで、ボーナスは四ヶ月分ありまして、約一〇〇万円あり、年収は四〇〇万円くらいになります。ただ、毎月の支払が一〇万円を超えるので、生活が足らなくなって、また借金返済のために借金をするという状態です。

弁護士

破産することを考えられて来られたのですか?

社員A

ええ、お話しを聞いてから決めたいと思います。

弁護士

裁判所の現在の基準では、
1年収の二倍以上の借金がある場合、または、
2毎月の返済額が、毎月の可処分所得に比べて返済が不可能だと認められる場合、
のいずれかの場合には、破産が認められることになっています。
あなたの場合は、毎月の返済額が一二万円くらいですからこれは返済不可能だと言っていいケースだと思います。

社員A

破産するにしても、費用がかかると聞いたんですが。

弁護士

ほとんど財産がない人が破産する時には同時廃止といって、簡単な手続きがとられます。このような同時廃止の事件では、裁判所に納める実費などの諸経費が五万円、弁護士に頼む場合の費用が約二五万円と、合計三〇万円程かかります。

社員

弁護士さんに破産申立を頼むメリットはあるんでしょうか?

弁護士

弁護士の名前で、破産の依頼を受けましたという通知を債権者に出すと、それ以降サラ金などの貸金業者からあなたのところに電話や手紙、訪問などが一切なくなります。貸金業者がこれに違反すると、場合によっては営業停止になる場合もありますので、貸金業者はこのことを大抵守ります。

 破産の申立を決めたときから返済を止めますが、貸金業者に弁護士さんからの通知が届くと、貸金業者からの支払い督促もなく、平穏な通常の生活に戻れるわけです。

社員A

破産をすると何かデメリットがあるんでしょうか?

弁護士

今の職を失うということは、破産が解雇理由にはならないため通常あり得ません。ただガードマンや保険の外交員の人たちは解雇理由になります。

社員A

戸籍や住民票には載るんでしょうか?

弁護士

そういうことはありません。ただ、住民基本台帳には記載されます。選挙権は勿論あります。

社員A

破産をすれば債務を完全に免れることはできるんでしょうか?

弁護士

破産の決定を受けただけではまだ免れたことにはならず、免責の決定を受けることが必要になります。例えば、生活苦や保証人になってやむを得ない事情で破産になったような場合には、免責されます。ただし、飲み食いや贅沢な物を買ったとか、遊興費に充てたといった身勝手なことでたくさん借金ができて、挙げ句に破産したというような場合は、負債額の一割〜二割程度を積み立てて債権者に一部弁済することを条件に免責となることが多いようです。 破産制度は、経済的にやり直す機会を与える制度ですので、心配せずに利用されたらどうでしょうか。