会報「SOPHIA」 平成17年2月号より

接見禁止に対する取消・解除に向けた弁護活動を!


刑事弁護委員会 接見交通部会
委員 湯原 裕子

1、 数字で見る接見禁止増加
 「起訴前に接見禁止がついていても、起訴後は取れる」というのが、かつての刑事弁護の常識とお聞きしました。
 しかし今、起訴後の接見禁止は明らかに増加しています。
 平成11年を1とした場合、平成15年は「勾留状発布数」が1.67倍、
「起訴前の接見禁止決定数」が2.39倍と漸増なのに対し、「第一回公判までの接見禁止」は6.53倍、「第一回公判後の接見禁止」は5.89倍と急激な伸びを示しています
(詳しくは刑事弁護ニュース30号及び会報平成16年11月号伊神会員の「接見禁止の悪用」をお読み下さい)。
2、 増加の原因は?
 なぜ、増加しているのでしょうか。
 我々の弁護技術が向上し、公判で争われることを恐れられている、と楽観できればよいのですが、そうでもなさそうです。
 やはり、検察官が安易に接見禁止を請求し、裁判官が特に疑問を持たずに請求を認容しているためだと思われます。
 窃盗や傷害など決して重大とは言えない犯罪において、単に否認しているという理由でなされたり、およそ罪証隠滅が考えられない自白事件においてさえ、共犯事件であるとの一事をもってなされるなど、極めて安易な要件の下に決定がなされています。
 また、前述のように、起訴後の接見禁止継続はもとより、検察官の立証が終了した後や結審後判決までの期間、さらには判決後もなされた例が報告されています。
 しかし、勾留中の者にとっては、一般人との接見交通権は、ほとんど唯一ともいうべき社会との貴重な窓口です。
 接見禁止によりこれを奪われれば、被疑者・被告人は孤独な状況に置かれ、家族がいる者、仕事を持っている者は特に、心配と不安に絶えず苦しめられ、その精神的苦痛は筆舌に尽くしがたいものがあります。
 最近の傾向は、被疑者・被告人の本来持っている他者と交流する権利を軽んじ、捜査機関に犯罪捜査を遂行させ、さらには検察官の公判活動を遂行させるための犠牲にすることを厭わない、そのような考えが蔓延していることの表れではないでしょうか。
3、 増加傾向に歯止めを!
   しかし、このような被疑者・被告人の権利を軽視する考えは明らかに間違いです。
 接見禁止を付すには、単に抽象的なおそれがあるだけでは足りず、より具体的な特段の事情があることを要すると考えるべきです。
 しかも一般人の接見については常に看守の立ち会いがあり、手紙は検閲されるのですから、接見により罪証隠滅のおそれが認められる事案は、極めて例外的な事案に限られるはずです。
 現在蔓延しつつある増加傾向を正すために立ち上がれるのは、我々弁護人だけです。
 積極的に接見禁止の取消・解除に向け活動されることを、切にお願い致します。
 ご活動の一助になるよう、会員専用ホームページに接見禁止の取消・解除活動に役立つ書式等を掲載しました。
 どうかこれらを活用して頂き、この増加傾向に歯止めをかけられるよう、ご協力下さい。