会報「SOPHIA」 平成27年6月号より


愛知から世界へ(18)

サバイディー ラオスで働いています



国際委員会 委員
棚 橋 玲 子


昨年10月末から国際協力機構(JICA)法整備支援長期専門家としてラオス人民民主共和国(以下、「ラオス」といいます。)の首都ビエンチャンに赴任しています。首都といっても街中で1番目立つ建物が15階建ホテルという規模ですが、ビアラオ(ラオス国産ビール)を筆頭に食文化も豊かで暮らしやすい街です。少し車で行くと未舗装の道端に牛が列をなして歩くのどかな光景も見られます(車と牛の交通事故の事例がよく議論にあがるのも納得です)。もっとも街中では工事があちこち行われており、経済発展の勢いを感じます。


 ラオスの司法をめぐる状況

現在、ラオスでは急ピッチで司法改革が進められています。今年度国会では憲法改正案の審議が予定されており、民法典の制定や刑法の改正も数年内に予定されています。法曹養成についても、これまでは各機関が個別に実施していたのですが、今年1月にラオス司法研修所が開所し統一的な修習制度が始まりました。


 プロジェクトの活動

プロジェクトの活動は民法典の起草支援をはじめ、刑事法や経済関連法令の執務参考資料の作成支援、法律の普及や法曹養成・実務家研修の改善支援など多岐に及んでいます。相手方機関も司法省、最高人民裁判所、最高人民検察院、ラオス国立大学の4機関であり、各機関から総勢90名程のメンバーが4つのワーキンググループに分かれて活動しています。日本からは長期専門家として私以外に検察官、弁護士及び業務調整員が1名ずつ派遣されており、4名のラオス人スタッフとともにチームを組んで働いています。


 日々の仕事

主に経済関連法令の執務参考資料(ハンドブック等)の作成や、民法典の起草作業に携わっています。もっとも実際に起草や執筆を行うのはメンバーであり、私たちが代わりに書くわけではありません。日常的に情報提供やアドバイスをしてメンバーの活動をサポートするのが私たちの役割です。メンバー自身が主体的に課題に取り組むことにより、その能力を向上させていくことがプロジェクトの目標となっています。
 自分のペースで仕事をしていたこれまでと違い、メンバー自身が問題点に気づき理解しないと次に進まないので、1つの事を決めるにもなかなか時間がかかります。また、メンバーの認識やラオスの社会事情など充分把握しないまま助言してしまい、理解してもらえないこともありました。今もまだ試行錯誤というところですが、自分達の手で良い法律や良い制度を作ろうという意欲あふれるメンバー達と共にラオスの司法の発展に寄与できることにやりがいを感じています。またラオスや周辺国の法律を学ぶ中で日本の法制度について新たな気づきを得ることも多いです。
 ところで、海外で働くと言うと、何かすごいと反応されることが多いです。しかし、実際働いてみると、確かに環境や文化は異なりますが、基本は人と人とのつながりであり、そこで大切なことは海外でも国内と変わらないような気がしています。あまり身構えすぎずに、第一歩を踏み出してみると意外に何とかなるのではないでしょうか(もちろん多くの方に助けていただいていますが)。興味がある方は、手始めにまずラオスにぜひお越しください。お待ちしています。