安保関連法案の問題点を衡く
司法制度調査委員会 委員
長谷川 一 裕
2月28日、当委員会の委員30名が参加して、蒲郡市にある「キッズサポートセンター 千兵衛(せんべえ)」(NPO法人楽笑運営)及び「障害者グループホーム 三谷の調べ」(NPO法人東海セーフティーネットワーク運営)の2施設の施設見学会が行われました。
1 6月22日に行われた司法制度調査委員会の法令勉強会は、第189回国会に上程され審議中の安全保障関連法案(以下、法案とする)がテーマとして取り上げられた。その概要は以下の通りである。
2 審議中の安全保障法制は、自衛隊法、周辺事態法等の既存の安保関連法令10本の改正に関する「平和安全法制整備法案」と新法である「国際平和支援法案」である。後者は、アフガン戦争、イラク戦争に自衛隊を派遣するために特措法が制定されていたが、新法の制定をしなくても自衛隊を派遣できるようにするための自衛隊海外派遣恒久法である。
法案の主な問題点を三つ指摘する。
第1は、集団的自衛権の行使の容認である。
我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が、わが国の存立を脅かし、国民の生命、自由、幸福追求の権利を根底から脅かす場合には、我が国に対する武力攻撃がなくても自衛権の行使ができることを自衛隊法、武力攻撃事態法の改正等により法制化する。
その違憲性は、歴代の内閣法制局長官や憲法審査会で与党推薦の憲法学者ですら違憲と断じているように、今や明瞭である。政府は、「他国への攻撃によって国家の存立を脅かされた実例はあるか」と聞かれても答えることが出来ない。立法事実自体が認められないのである。安倍首相は、さかんに日本の輸入原油を運ぶタンカーの八割が通過するホルムズ海峡が機雷封鎖された事態を挙げるが、このような地理的に離れた事態までもが対象となりうるということ自体、行使の要件が漠然かつ不明確で広範であることを意味する。
第2の問題点は、自衛隊が、地球上のあらゆる地域で他国の武力行使と一体となって後方支援活動に従事することができるようになるという点である。
重要影響事態法は、自衛隊の米軍支援活動について、従来は周辺地域に限定されていた対象事態の地理的制約を取り払い、世界のどこでもグローバルに米軍を支援することを認める。同法や新法である国際平和支援法では、これまでは自衛隊の後方支援活動は「非戦闘地域」に限定されていたが、「現に戦闘行為が行われている現場」以外ならどこでも兵站活動に従事できるようにするとともに、従来は禁止されていた弾薬の提供や発進待機中の戦闘機の給油も認める。後方支援活動なる言葉は日本政府の造語であり、英語ではロジスティックサポート=兵站活動と呼ばれるが、戦場では前線も兵站活動も区別は出来ず、両者は一体不可分である。兵站は、戦闘部隊とは異なり脆弱であるが故に敵から最も狙われやすい。自衛隊派遣のリスクは増大し、間違いなく自衛隊員が棺で帰ることになるだろう。政府は、国会審議において、他国の戦争に巻き込まれるリスクを否定し、自衛隊員のリスクが高まることを決して認めないが、国民と議会政治を愚弄する姿勢という外はない。
第3は、国際平和協力法(PKO協力法)を改正し、危険な紛争地域での治安維持活動、アフガンで約3500名の死者を出したISAF(国際治安支援部隊)の様な国連が統括しない安全確保活動に自衛隊が従事することを認め、正当防衛以外に任務遂行のための武器使用も容認する。
その他、武器防護のための武器使用権限を米軍等に対象を広げるといった問題がある。
3 論議では、自衛隊員は派遣が決まった後に退職できるのか、このような方向性が強まれば、抗命隊員処罰のための軍法会議の設置や徴兵制の導入の検討等が始まるのではないか等の様々な意見が出された。