会報「SOPHIA」 平成27年4月号より

国際人権最前線

私は日本人?非嫡出子の認知と国籍取得


人権擁護委員会国際人権部会 委員
大 嶋   功

 外国人女性Aと日本人男性Bとの間に、子C(ただし日本で出生したものとする。)が生まれた場合、Cは日本国籍を取得するのであろうか。Cが、今後、日本で生活をするのであれば、日本国籍を取得できるかは、大きな問題となる。

1 国籍法は、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき」には、子は「日本国民とする」と定めている(同法2条1号)。

それゆえCが、出生の時に嫡出子であれば、Cの父であるBが日本人であることから、Cは日本国籍を取得する。

2 Cが、非嫡出子の場合が問題である。Cが出生前にBから胎児認知されたのであれば、「出生の時に」法律上の父Bが日本人であることから、国籍法2条1号により、Cは、日本国籍を取得する。

3 Cが出生後にBから認知された場合、認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる(民法784条)とされているが、国籍法では、認知がされてもその効力として、出生の時にさかのぼって国籍を取得するとは考えられていない。

それゆえ、Cに日本国籍を取得させるには、後述する場合を除いては、国籍法3条の国籍取得の届出をしなければならない。

4 このとき、Aが別の男性と婚姻している場合等、CにB以外の男性の嫡出推定が及んでいる場合には、Bは、Cを胎児認知することができない。この場合、Cは、出生時に日本国籍を取得できないのかが問題となる。

この点について、最判平成9年10月17日は「客観的にみて、戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ日本人である父により胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情がある場合には、右胎児認知がされた場合に準じて、国籍法2条1号の適用を認め、子は生来的に日本国籍を取得すると解するのが相当」として、親子関係不存在確認の審判確定後に日本人男性からの認知届がなされた子に対し、日本国籍の取得を認めた。

5 この判決を受けて、平成10年1月30日民五第180号各法務局長・地方法務局あて民事局長通達が発せられ、通達では、「子の出生後3ヶ月以内に嫡出推定を排除する裁判が提起され、その裁判確定後14日以内に認知の届出等がされている場合には、嫡出認定がされなければ胎児認知がされたであろうと認めるべき特段の事情があるものと認定し、この認定の妨げとなる事情がうかがわれない限り、子は、出生により日本国籍を取得したものとして処理する」とされているため、胎児認知ができない子に対し、特段の事情の妨げとなる事情が無ければ、日本国籍を取得させることができる。

6 その後、平成11年11月11日民二・民五第2420号民事局第二課長、第五課長通知が出され、嫡出推定が及ぶため胎児認知できない子に対し、胎児認知の届出をし、届出を不受理とした上で、届書等が返戻された後、子の出生後に外国人母の夫の嫡出推定を排除する裁判等が確定した旨の書面を添付して、返戻された届書によって届出をすれば、不受理処分を撤回し、当初の届書等の受付の日に届出の効力が生じ、出生時にさかのぼって、子は日本国籍を取得できる運用がなされることとなった。

したがって、この方法によれば、Cに日本国籍を取得させることができる。