会報「SOPHIA」 平成26年12月号より


LINE等のネットいじめ研修



子どもの権利委員会 委員
景 山 里 子


日 時 12月2日 10:30〜12:00
場 所 弁護士会館5階ホール
講 師 竹内 和雄 氏

1 12月2日にLINE等のネットいじめ研修が開催された。講師には今年9月に行われた「子ども虐待防止世界会議」で講師を務めた竹内和雄さんをお招きした。竹内さんは、現在、兵庫県立大学環境人間学部において、将来教職に就く学生に対して生徒指導や教育相談の在り方を指導されている。特に現代のネット(インターネット)やスマホ(スマートフォン)に包囲された子ども達が遭遇するトラブルの現状と予防対策につき研究されており、近時ではスマホ使用ルールを小学生自身に作らせる取り組み等も試みている。今回の研修は、実際のスマホ画面を示しながら、スマホの基礎知識から現代のスマホ時代に対応した生徒指導等の「コツ」など盛りだくさんな講義だった。その一部をご紹介する。


2 ネットトラブルの原因

(1) LINEとはチャットと呼ばれるネット上での会話アプリであるが、ほとんどのトラブルが会話のすれ違いや誤解により生じている。誤解が生じたらそれを訂正するのが通常の人間関係であるが、LINE上ではそれをしない。何故か。1つにネット利用の低年齢化がある。神戸市内の小学5年生で携帯電話を所持している子どもは約3割だが、日常的にLINEを使用しているのは約8割にのぼる。実際の人間関係経験の少ない者が使用しているのが現状である。またLINEでの会話は瞬時に複数人によりなされるため、誰かが誤解に気付いても次々に話題も変わり忘れてしまう。さらにはほとんどがすれ違いや誤解であるため明確な悪人がおらず、トラブルになるだろうことへの自覚が無く訂正しない。その結果、悪口やLINE外しなどのいじめにつながる。


(2) 近時コンビニ従業員が暑い日に店の冷凍庫に入った写真をフェイスブックに載せて問題となった件があったが、この種のトラブルはスマホ中心の生活実態などに原因があると言う。スマホを手放すことができない子ども達は親と話をしない、新聞を読まない。社会的常識や倫理・法律を学ぶ場が無く、一線を乗り越えてしまう。リベンジポルノやいじめにつながる。



3 効果的な指導方法

子どもの方が情報を知っているという逆の情報格差が存する現在だが、子どもが知らない人間関係問題の解決方法、常識・倫理・法律は大人が指導教育していく必要がある。また瞬時に流れるLINE等での話題に乗り遅れないようにしなければならない子ども達のストレス、相談したくても相談できる相手がいない子ども達の寂しさを受け止めることが大切である。最も大事なことは、何をどう言えば子ども達の心に響くのかを知ること。スマホは危険だから止めなさい等、一般的・抽象的な説教は子どもの心に響かない。ポイントは@具体的事実(例えば、上記2(2)のコンビニの件で支払うべき「損害賠償額」や、他事例での「退学」「罪名」などネット上の言動に対する具体的処分)を教えること。Aトラブル・被害に遭ったら相談にのるよ、と伝えること。(ネットやスマホが苦手でも)自分は知らないけど知っている人を知っているから相談してね、相談されても(学校に知らせる等)暴走しないよ、と伝えること。この2つ。



4 竹内さんは大人と子どもで一緒に考えることが大切と言う。

 スマホ時代でも大切なのは子どもの心のケアであり、スマホの問題は心の問題である、と締めくくられた。