会報「SOPHIA」 平成26年11月号より

シンポジウム
さらに加速する若者の貧困
〜奨学金問題・ブラックバイト・若年自殺を無くそう〜

会 員 菊 田 直 樹

1 第一部

11月22日当会館5階ホールにて、シンポジウムが開催された。来場者数は145名と大盛況で、今回シンポジウムで取り上げた問題に対する関心の高さを改めて感じた。

(1) 記念講演

記念講演は、中京大学教授である大内裕和先生から、奨学金問題やブラックバイトの問題について、大学生の現状を踏まえてご講演いただいた。学生達は、生活費や就職活動に掛かる費用を稼ぐためにバイトをしているが、バイトが忙しいために、ゼミの合宿ができないという事態が生じているとのことだった。

大内先生が学生にアンケートを採った結果、正社員と同様にノルマを課せられたり、休みたくてもバイトを休ませてもらえない学生がおり、そのために、試験に出席できず、留年して退学する学生もいるという本末転倒の事態も起こっているという話にはとても驚いた。

(2) 当事者発言

続いて、愛知県学費と奨学金を考える会の徳枡彩実さんから、大学生の実情をご報告いただいた。さらに、ブラックバイト対策弁護団あいちの堀江哲史会員から弁護団の活動について、ビギナーズネットの金井英人会員から司法修習生の実情について、それぞれ報告があった。

当事者発言の最中には、当事者の悲惨な現状を聞き、会場から驚きの声があがっていた。

(3) 記念講演

次に、NPO法人POSSE事務局長の川村遼平さんから、若年自殺やブラック企業の問題についてご講演いただいた。

川村さんのご講演の中で、ブラック企業やブラックバイトの被害に遭う若者は、自分が悪いと考えるため、被害に遭っているという認識がなく、弁護士等に相談しようという発想がないため、労働に関する学習をしていき、自分が悪いのではないということを認識させる必要があるという話があった。弁護士会として、高校や中学校で学習会などをする必要性を強く感じた。


2 第二部

第二部では、大内教授、川村さん、日本福祉大学アンビシャス・ネットワーク所属の田中嵩久さん、日弁連貧困問題対策本部委員の岩重佳治弁護士にご登壇いただき、若者の貧困問題解決のためにできることをお話しいただいた。

田中さんは、アルバイトを3つ掛け持ちしており、当事者の立場からの心情をお話いただいた。

岩重弁護士からは、貸与型奨学金の問題点などの指摘とともに、活動の重要性についてお話いただいた。

パネルディスカッションを通じて、若者は自分の置かれた環境を自分自身が悪いと考えるため、相談窓口を設置するだけでは問題解決につながりにくく、広報活動や若者にわかりやすい学習会などの活動が重要であることを強く感じた。