会報「SOPHIA」 平成26年10月号より

司法修習生の給費制廃止問題を考える市民集会
〜野球解説者・元プロ野球選手 鈴木孝政氏と考える


司法修習費用給費制復活緊急対策本部 委員
小 林 智 哉

 

「人を育てる」ということ〜

10月19日、名古屋市教育館2階講堂において「司法修習生の給費制廃止問題を考える市民集会〜野球解説者・元プロ野球選手 鈴木孝政氏と考える『人を育てる』ということ〜」が開催されました。

名古屋まつりと重なったためか、参加者は60名程度と若干少なかったものの、内容は非常に濃いものとなりました。

集会は、鈴木孝政さんからの「司法試験に合格した人が、大変な借金を背負わされていると聞きましたが、詳しい話はよくわかっておりません。今日はよろしくお願いします。」との挨拶から始まりました。

まず、給費制廃止問題を紹介するため、3月18日に報道されたニュースジャパンの映像を流しました。

また、ビギナーズ・ネット愛知支部代表の異相武大さんから、給費制の意義に関する説明があり、平成15年に約4万人だった適性試験(大学入試センター)の受験者数が、平成26年には約4千人まで減少し、実に10分の1になってしまったと報告がありました。

その後、ビギナーズ・ネット会員の都築さやかさん、及び、当対策本部の児島貴子会員と市川哲宏会員より、若手弁護士の貸与金返済シミュレーションを題材にした寸劇が披露され、奨学金の返済に貸与金の返済が加わると毎年高額な借金を返済しなければならず、生活が困窮する可能性が示唆されました。

次に、当対策本部の久野由詠会員より、原発の稼働差止めを求める活動など、いわゆる手弁当で行う弁護士の公益的な活動が紹介され、経済的に余裕のない若手は、手弁当の公益的活動に参加できない可能性があるとのお話でした。

そして、ビギナーズ・ネット代表であり、第68期修習予定者である服部咲さんが、当事者として声を聞かせてくれました。貸与金の申請をする際、母親が連帯保証人になってくれたが「借金なんだから、できるだけ使わないようにしなさいよ。」と言われたそうで、修習に入る前から、勉強会のための交通費支出や書籍の購入を躊躇せざるを得ず、充実した司法修習が送れないのではないかと、不安な気持ちを話してくれました。

その後、日本弁護士連合会司法修習費用給費制存続緊急対策本部の釜井英法事務局長より、これまでの活動と現在の政治状況が報告され、最後に鈴木孝政さんが、給費制廃止問題について、以下のような熱いメッセージを残してくれました。

「今日の集会に参加して、給費制廃止問題は国が悪いと思いました。プロ野球の育成選手は、一軍の試合に出られないが、球団が活躍して欲しいと見込んだ選手だから、給料や野球に必要な道具が支給されています。司法試験合格者も、国が認めたエリートだから、きちんと育てないといけないでしょう。プロ野球でも、借金を抱えてまで選手になりたがる人はいないですよ。研修のためのお金を躊躇しなければいけないなんて、服部咲さんの話を聞いて涙が出そうになった。服部さん、負けないで頑張ってね。

私の母親は、私が打たれて非難される姿を見るのが怖いと球場には来てくれなかったけど、テレビ中継を見ていて、私がピンチになって汗をかくと、ブラウン管越しに汗を拭いてくれたらしいです。私のように、ピンチの時でも、きっと誰かが見てくれているので、みんな負けないで下さいね。」

司法修習生への給費制廃止問題については、国会議員の方々から「他にも金が必要なところがある」「法曹だけの優遇は市民が納得しない」といった意見を頂戴することがあります。しかし、現実を市民へ伝えると、鈴木さんのように理解を示してくれる人は多いのではないかと感じました。

頑張って修習している司法修習生の汗は、国が拭くべきです。

今後も、大勢の人に給費制廃止問題を広め、給費制復活に向けて活動していこうと思いました。