会報「SOPHIA」 平成26年10月号より

第57回 日弁連人権擁護大会
最少人数単位会(函館弁護士会)で開催された人権擁護大会


会 員
庄 司 俊 哉

10月2日・3日、北海道函館市にて第57回日弁連人権擁護大会が開催された。開催内容と参加者数は次のとおりであった。

2日

シンポ第1分科会

北の大地から考える、放射能汚染のない未来へ

1072名

シンポ第2分科会

障害者権利条約の完全実施を求めて

856名

3日

大 会(宣言決議等)

828名

シンポ参加者計1928名のうち市民参加者が619名と、多数の市民に関心をもって参加いただいた。

【函館という街】

函館市は今年、ペリー来航180年、五稜郭築造150年と記念の年であるのみならず、2016年3月には北海道新幹線が開業し、東京まで4時間で行けるようになるとのことである。  さらに函館市は、原発訴訟の原告として、国及び電源開発鰍ノ対して、大間原子力発電所(青森県下北郡大間町)の許可処分の無効及び建設中止を求めて、本年4月、民事訴訟を東京地裁に提起している。函館市は、津軽海峡を挟んだ対岸に大間原発(青森県)が位置しており、被害が大きくなる半径30q以内にあるにもかかわらず、函館市に何の説明・同意もないまま建設が再開され、しかも建設後には、原発の事故を想定した地域防災計画や避難計画を定めることを義務づけられている。第1分科会に出席された工藤壽樹函館市長は「住民の生命、安全を守らなければならないのは、最終的に基礎自治体である市町村である」という考えが提訴の動機である旨説明された(函館市のHPも参照)。
 こういったホットな話題のある地で、市民からの高い関心のもと、人権擁護大会が開かれた。
 ところで函館弁護士会は、全国最少人数の単位会(49名)であるにもかかわらず、全国から多数の会員を招き人権擁護大会を成功裏に終わらせた。緊張感と高揚感に満ちた函館弁護士会員の表情が印象的だった。


【2つの宣言決議】

2分科会のシンポを踏まえて、2つの宣言が決議された。いずれも詳細は日弁連のHPを参照いただきたい。

原発訴訟における司法判断の在り方、使用済燃料の処理原則及び原子力施設立地自治体の経済再建策に関する宣言

原発訴訟の司法判断にて、万が一にも原子炉等による災害が発生しないような司法判断枠組みを確立すること、国は原発の安全性を検討するために必要な情報開示の仕組みを整備すること、国及び電気事業者は高レベル放射性廃棄物について再処理施設等の核燃料サイクルを速やかに廃止すること等、原子力施設立地自治体の経済再建を図るために一定の支援をすること等を求めるもの。

障害者権利条約の完全実施を求める宣言

国に対し、障害者権利条約に基づいて「基本的施策」(民間事業者の合理的配慮義務制定等)、「個別分野の施策」(労働・雇用分野での格差解消の法整備等)、「尊厳が尊重される生活の確保のための施策」(障害者虐待防止の仕組みの拡大等)、「条約実施のための制度的担保」(実施確保のための国内人権機関の創設等)を求めるもの。


【次年度は千葉県】

次年度の人権大会は、平成27年10月1日(木)・2日(金)に、千葉県にて開催予定である。