会報「SOPHIA」 平成26年9月号より

子どもの事件の現場から(135)
未成年後見人として、少年の成長を見守る


会員 福谷 朋子

彼に初めて会ったのは9年前。家庭裁判所から選任された未成年後見人として、彼の入所する児童養護施設に自己紹介に行ったときでした。

ある事件をきっかけに家庭で生活できなくなった彼とその兄弟たちには、それぞれにひとりずつ、家庭裁判所から弁護士が未成年後見人として選任されました。中にはもう成人間近な年長の兄弟もいました。彼らは、突然自分たちを襲った過酷な運命に戸惑い、傷つきながらも、何も知らない末っ子の彼を守ろうとしていました。反対に、兄弟たちは彼に助けられてもいたのだと思います。兄弟全員と未成年後見人全員で、イオンに食事に行ったとき、子犬のようにじゃれついてくる彼に対応する年頃のお兄ちゃんのまなざしを見て、そう感じました。

小学校低学年だった彼は、兄弟たちから可愛がられて育ったからでしょうか、年齢以上に幼く、かわいい子でした。突然いなくなった両親を想って泣いた夜もあったようです。そんな彼に、施設の担当の先生は、添い寝したり、一緒にお風呂に入ったりして、寄り添い続けてくれました。

その後も、我々未成年後見人とそれぞれの担当の子どもたちとの交流は続きました。年長の兄弟の中には、免許を取って、後見人弁護士をドライブに誘ってくれた子もいました。別の兄弟が学校で活躍して新聞で紹介されたときには、担当の後見人弁護士は、私たちに誇らしげに新聞記事を添付メールで送ってきました。

幼かった彼も、どんどん成長していきました。中学を卒業するとき、彼は施設での記念の行事に私を親代わりとして呼んでくれました。思春期真っ盛りの彼は無愛想で、話しかけても「うん」「いや」のどちらかの返事だけ、ろくに私と目を合わせることもしませんでしたが、行事の間中、終始チラチラとこちらを気にかけていてくれました。気がつくとバイキング形式のお料理を取り分けて、何も言わず私の前に置いてくれていました。

彼の入所する施設では、高校生になり、アルバイト代で携帯電話の料金をきちんと支払える目途がついたら携帯電話を持ってよいことになっています。部活とアルバイトを両立し、高校1年生の冬、彼はようやく念願の携帯電話を持つことを認められました。法定代理人として携帯電話の契約に行ってほしいと連絡が来て、一緒に携帯電話ショップに行きました。既に料金プランや機種などを調べに調べて、自分のアルバイト代できちんと支払えるよう計画していました。契約が完了し、自分のものになったスマートフォンを手に取ったときの彼の笑顔は、忘れられません。

スマートフォンを手に入れた彼がその場で行ったのは、パズドラ(スマホのゲームアプリ)のダウンロードでした。既にパズドラ中毒だった私はその場で彼にフレンド申請をして、以降、私たちはパズドラ友達です。しばらく彼がログインしていなかったので「どうした?」とラインでメッセージを送ったら、赤点を取ってスマホを取り上げられていたと判明したこともありました。

先日、彼とブロンコビリーに行きました。あの小食だった小さな彼が、こんなに食べるようになったんだとしみじみしながら、相変わらず(パズドラ以外のことでは)口数少ない彼とご飯を食べるひとときは、とても幸せな時間でした。