会報「SOPHIA」 平成26年8月号より

少年は涙した・・・!?
〜ティーンコート〜


法教育委員会 委員
平田 志野

サマースクールも後半に入った8月7日、厳かなる(少し緊張した?)雰囲気の中、中高生によるティーンコートが開廷しました。

事件の概要は『女子中学生Aが、ある日の授業後、幼馴染である同級生の少女Bの携帯電話を奪い取って投げつけ、Bの目に怪我をさせた』というものです。


1 検察官が追いつめる!追いつめる!
検察官 『携帯電話を投げた距離は?』
A 「60センチくらいかな…。」
検察官 『そんなに近くから投げたのなら、Bの顔に当てようと思って投げたのでは?』
A 「当てようと思ってはいないです。」
検察官 『そうですか…。でも、それほど近い距離なら、当てようと思ってなくても、顔に当たることは簡単に予測できたのでは?』
A 「…。今思えば予測できたかもしれないですけど、その時は、カッとなってしまって本当に予測していなかったんです。」
検察官 『予測できない程カッとなった?』
A 「はい。予測していなかったです。」
検察官 『あなたは気に入らないことがあると通常であれば容易に予測できることも予測できなくなるほどカッとしやすい性格ということですか!?』

恐ろしい尋問だと思いませんか。私は心底、A役じゃなくて良かったと思いました。


2  少年の将来に向けた提案

他方、弁護人は、Bの携帯電話のデータが消えてしまったことに関して、「ABは幼馴染で、共通の友達の連絡先や写真データがあるはずだから、AがBにそのデータを送ってあげたらどうか」という提案をしました。

幼馴染である二人が今後仲直りするための具体的な方法を提案するもので、素晴らしい発想力だと思いました。

また、AのBに対する謝罪の気持ちを引き出す尋問は、A役の弁護士が思わず涙する場面もある見事なものでした。


3  裁判官の訴訟指揮

さて、白熱の議論の中、裁判官の訴訟指揮はというと、尋問を最後までじっくりと聞き入っている裁判官もいれば、検察官の厳しい尋問に、弁護人が「異議あり!重複する質問です!」と訴えた場面で、異議を採用して検察官に対し質問を止めるよう毅然とした態度を示す裁判官もいました。

裁判官は、予め用意されたシナリオカードの通りに話すことがメインになってしまうのかと思いましたが、裁判官それぞれの訴訟指揮が見事に発揮されていて興味深かったです。


4 処分結果は

裁判官チームは、謝罪の手紙を渡す、仲裁役を入れて話し合う等、ABが仲直りするための具体的な方法を処分として言い渡しました。


5  おわりに

来年も、少年役の弁護士の涙を誘うジュニア法曹達の活躍を期待しています。