会報「SOPHIA」 平成26年6月号より

犯罪被害者支援連載シリーズ55
「緒あしす」との懇談会開催される


犯罪被害者支援委員会 委員長
宇 田 幸 生

1.去る5月24日、殺人事件ご遺族による自助グループ団体「緒あしす」メンバーと当会及び岐阜県弁護士会の犯罪被害者支援にかかる委員会の委員有志による懇談会が開催された。同懇談会は平成12年に緒あしすが発足してから断続的に開催されており、今回で9回目となった。なお、「緒あしす」は昨年度、当会において人権賞も受賞されている。具体的な活動内容等の紹介は会報635号に掲載されているため、参考にして頂ければ幸いである。

当日は、当会で新たに作成したチラシや、今年度、当会で正式に事業化された被害者支援弁護士派遣制度の紹介を行い、さらに予め「緒あしす」より頂いていた質問事項を活用しつつ活発な意見交換がなされた。


2.被害者支援弁護士派遣制度の紹介では、被害者やそのご家族向けに作成したパンフレットをもとに説明をさせて頂いた。実際に利用される立場での視点からのご意見はいずれも刮目するものばかりであった。例えば「無料の文字を表題にも入れた方が良いのでは」、「無料で説明を受けられる制限時間の説明が欲しい」「被害直後の支援対応であるならば、表題にもその旨書いた方が伝わるのでは」等、より改善すべき様々な視点を提供頂けた。

また、今年度新たに作成した当会のチラシについても「弁護士会だけでなく他の機関で出来ることについての案内もあった方が良いのでは」等と利用者視点での知見を頂けた。


3.続いて、事前に「緒あしす」より頂いていた質問事項に沿って意見交換がなされた。

質問事項は多岐に渡り、意見交換自体も活発に行われ、本来終了する時間を超えてもなお話が尽きなかった程であった。


@検察審査会制度について
当委員会においても、検察審査会申立の実例はそれ程多くはない。同制度に関しては「不起訴不当」と「起訴相当」の違い等について質問がなされた。日本語としても極めて分かりにくい用語であると改めて感じたが、起訴強制制度との兼ね合いでは、必ず押さえておかなければならないポイントでもある。
A刑事弁護との関係について
被害者支援に取り組みつつ、他方で刑事弁護にも携わるという弁護士の立場は、非常に分かりにくい。議題では、真実をただ知りたいと望む被害者やご遺族の想いに対し、被疑者被告人側が黙秘権を行使するという場面を想定し、その是非について意見交換がなされた。裁判における真実発見の困難さが顕在化する場面の一つといっても良いかもしれない。
B被害者支援弁護士への想いについて
被害者支援については法整備が進められているものの、未だ不備は多々存する。しかし、そんな中でも、制度の枠内において最大限の努力を続けて欲しいというご遺族の強い想いを改めて伝えられた。また、ある刑事裁判において、ご遺族の想いに寄り添いながら支援をしてきた代理人弁護士に対し、当日欠席されたご遺族の方による感謝の手記が紹介された。ご遺族の想いが綴られた手記を拝聴する中で被害者支援にかける当該代理人弁護士の真摯な取組みを知り、胸を打たれた。

4.被害者支援もまた、信頼関係の上に成り立つもの。各種議題を通じ、改めて被害者支援活動への励みを頂くことが出来た充実した懇談会であった。当委員会では、今後も継続的に同懇談会を開催していく予定であり、是非、多くの若手委員にも被害者ご遺族の想いに直接触れてほしいと思う次第である。