会報「SOPHIA」 平成26年5月号より

子どもの日記念行事
シンポジウム「子どものいじめは大人の問題!?パート2
 〜解決のヒントは子どもの視点!〜」が開かれました。


子どもの権利委員会 委員 北 川 喜 郎

1 はじめに

5月10日伏見ライフプラザ5階鯱城ホールにて、当委員会主催のいじめに関するシンポジウムが開かれました。


2 講演「子どもの権利、おとなの権利と責任」

本シンポジウムは、作家・クレヨンハウス主宰の落合恵子さんの基調講演で第1部の幕を開けました。

講演では、落合さんご自身が幼少時代に傷ついた経験談を交えながら、子どもが100人いれば100通りの価値観があって当然なのに、大勢の人がいても価値観は一つで「みんなと違う」ことがいじめの理由になってしまっているとの指摘がありました。その上で、ご自身は母親の愛情と祖母からの「いつでも逃げておいで」という言葉で救われたことを紹介し、いじめで苦しむ子どもたちにもこの言葉や空気感を伝えられるかどうかが重要であると伝えられました。そのためには、子どもの居場所(人間という関係性そのものが居場所になる)が学校だけになってしまわないように、大人がどれだけその居場所の準備ができるかが大切であるとも指摘されました。

一方で、大きな意味でのいじめが社会にはたくさんあること、そして、大人社会の傾向が子供のいじめに反映していることを指摘し、大人の責任についても検討がされました。

また、「人は、記憶でできている。たった一つでいいから丸ごと自分を肯定される記憶、そんなその子の避難所になってくれる記憶があったなら(その子は救われる)」という思いが伝えられ、そしてこのメッセージをいじめてしまう側の子どもも含めて伝えていきたいとの言葉が大変印象的でした。

講演の最後には、「空より高く」の歌を聴いて、子どもたちへ「君の心よ、高く、広く、強く(攻撃ではなく、『弱さ』を知る)なれ」というメッセージと共に、いじめの真っ只中の子どもたちへ「君はキスしたことあるか?大好きな人とキスした時のあのドキドキを知っているか?まだなら、死ぬな!」と落合さんらしいメッセージで締めくくりました。


3 当委員会のいじめ問題に関する活動報告

続いて、第2部では当委員会の高橋直紹委員と竹内千賀子委員によって、小学5年生から中学3年生までを対象として行っているいじめの出張予防授業など、当委員会のいじめ問題に対する取り組みが紹介されました。


4 パネルディスカッションと会の感想

第3部では、竹内委員によるコーディネートの下、落合さん、当委員会の多田元委員長、高橋委員による対談が行われました。

対談では、まず「いじめの問題とどう向き合うのか」について意見交換がなされ、3人は共通して、子どもたちと誠実に向き合い、子どもの話を聴くことの重要性を再確認されました。その上で「いじめ防止対策推進法」も批判的に評価し、いじめた子に対する指導を強化し子どもを取締る同法律の姿勢そのものに力のある者に従おうとする誤った方向性すら含んでいるとの厳しい指摘もありました。

また、「子どもの視点に立つ」というテーマについても、「私たちはもう大人なのだから子どもにはなれないけれど、自分の心の中にいる子どもの自分に会えるかどうか」「表面上は言葉に出ない部分についても、どれだけ想像して子どもの声を聴けるかどうか」の重要性などが話し合われました。

まさに会の表題の通り、子どものいじめ問題を考えるにあたり、我々大人の問題について深く考察できた充実した会となりました。