会報「SOPHIA」 平成26年1月号より

死刑廃止を考える日2014
―映画『死刑弁護人』から―


人権擁護委員会(死刑問題研究部会) 委員  井 上 健 人

1 企画の趣旨

日弁連は、死刑のない社会が望ましいことを見据え、死刑廃止について、全社会的議論を呼びかけています。その一環として、全国の弁護士会で、「死刑廃止を考える日」を開催しており、当会もこれを継続して開催しています。

このような趣旨で、1月18日、当会会館において、市民集会「死刑廃止を考える日2014」が開催されました。集会では、2012年6月劇場公開された映画「死刑弁護人」の上映に続き、映画の主人公である弁護士の安田好弘氏、同映画の監督である東海テレビの齊藤潤一氏、アメリカの死刑に関する判例を基礎に提唱された「スーパー・デュー・プロセス」について研究しておられる、弁護士で、名城大学名誉教授の小早川義則氏を招いて、小林修委員がコーディネーターを務め、死刑事件の弁護のあり方についてパネルディスカッションがなされました。

2 安田氏の弁護活動

安田氏が取り組まれた死刑事件の実績は周知のとおりです。映画で取り上げられた事件だけを見ても、和歌山カレー事件、新宿西口バス放火事件、名古屋女子大生誘拐殺人事件、光市母子殺害事件、オウム真理教事件といった、誰もが尻込みをする事件ばかりです。

安田氏が進んで受任した死刑事件は1つしかなく、後は、他から頼まれて、やむにやまれず受任されたということでした。「一度顔を見たら、知らんとは言えない。」という思いで、安田氏は困難な死刑事件に取り組んでこられたということです。

命を委ねられている以上、死刑執行のときまで、「骨を拾うまで」が弁護人の仕事だと言い切る安田氏の弁護活動は、常人にはなしえない、想像を絶するものがあります。

3 スーパー・デュー・プロセス

安田氏の活動を通じて分かることは、死刑事件弁護は、人の命を預かる事件であることから、ほとんどそれに掛かりきりでなければできないような、大変な労力が必要となる仕事だということです。にもかかわらず、日本では、死刑事件について、十分な弁護体制が制度として構築されていません。安田氏のような個々の卓越した力を持つ弁護士に依存しているというのが現状です。

この点について、小早川氏によれば、アメリカでは、死刑が、かけがえのない(「unique」な)人の命を奪う刑罰であることから、非死刑事件とは異なる特別な手続が必要であるという認識の下に、主に量刑手続の中で、「スーパー・デュー・プロセス」が提唱されているということです。  加えて、小林委員によれば、アメリカ法曹協会(ABA)が「死刑事件における弁護人の選任と弁護活動に対する指針」(ABAガイドライン)を定め、死刑事件においては、被疑者段階から有罪判決後まで、手厚い弁護体制が敷かれているとのことです。

4 終わりに

死刑は、人権侵害の中で最も過酷なものと言えます。死刑事件の手続保障を厚くすることは、他の事件の手続保障を厚くすることにもつながる、ボトムアップの意味があるという趣旨のことを安田氏は述べられていました。死刑事件についての手続や弁護体制が制度としてどれだけ手厚いかということは、その国の人権水準を反映する指標となるものではないでしょうか。