世界の流れに逆行する秘密保護法
秘密保全法制対策本部 委員
嶌 将 周
1 強行採決が繰り返され、12月6日、秘密保護法が成立してしまいました。多くの市民が廃案や慎重審議を求め、当会も明確に反対の意思を示して集会やデモを開催してきましたが、その声は無視されました。
しかし、声を上げたことが全く無意味だったわけではありません。与党は、国会会期末ギリギリまで採決に踏み切れませんでした。内容的には不十分とはいえ法案を修正し、今後の検討事項を答弁せざるをえませんでした。法案に対する態度が明確でなかった一部野党も、最終的には反対に回りました。
この声を、今度は秘密保護法の廃止を求めて上げ続けるため、12月23日、当会のほか秘密保全法に反対する愛知の会等の市民団体が共催して、集会を開催しました。会場いっぱいの350人もの参加者がありました。
2 基調講演
藤田早苗氏(英国エセックス大学・人権センター講師)から、国際人権法の視点から見た秘密保護法の問題点を講演いただきました。
藤田氏は、以下のような国際人権法上の基本的な考え方を指摘されました。「『情報の自由は基本的な人権であり、すべての自由の要石である』(第1回国連総会決議59(1))。表現の自由には『情報及び思想を求め、受け及び伝える自由を含む』(世界人権宣言19条、市民的・政治的権利に関する国際規約(自由権規約)19条)。したがって、情報にアクセスする権利は自由が原則で、情報は公開が原則であって、その制限は例外である。制限する場合には、厳格な条件を満たさなければならず、満たした場合でも、情報の公開により損害が生じうる危険より、情報を公開することによる公共の利益の方が大きい場合には、公開しなければならない。その判断は独立機関によらなければならない。」
これらの考え方からすれば、秘密保護法は非常識な法律だといえます。国連人権高等弁務官のナビ・ピレイ氏ほか海外から多数の批判が寄せられたのは当然のことでした。
なお、これらの考え方は、今年6月に発表された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)にも反映されています。日弁連は、同原則と比較して秘密保護法の問題点を指摘した会長声明を発表しました。また、日弁連HPには、同原則の全文和訳も掲載されています。
3 特別報告
新海聡会員(NPO法人情報公開市民センター理事長)から、最近になってようやく開示された秘密保護法の法令協議に関する公文書についての報告がありました。
新海会員は、以下のような報告をしました。「平成23年11月に行われた、内閣情報調査室と防衛省、外務省、警察庁等の補佐級説明会の議事要旨に、秘密漏えい罪の刑事手続における特定秘密の開示に関して、内調担当者が大要、『憲法上の問題点があるから、議論をするとなると相当の時間をかけないといけないが、そうすると法案提出に間に合わないので、今問題となっていない以上は議論しないでおこう』と発言したと記載されている。仮に平成23年時点でこの文書が開示されていれば、法案についての議論はもっと内容のあるものになったであろうし、法案審議も継続したであろう。まさにこれは知る権利の侵害だ。」
秘密保護法成立の直前まで立法過程の情報を不開示にしておいて、市民から問題視されていないから議論せずに法案を提出してしまおうというのですから、法案の問題性を隠蔽するための不開示であることは明らかです。政府が情報公開に消極的である理由の本心が見て取れます。
4 集会では最後に、当会を含めた団体・市民が一丸となって運動を継続し、さらに盛り上げていくことが確認されました。
世界の流れに逆行する秘密保護法を廃止させなければなりません。