会報「SOPHIA」 平成25年12月号より

データから見る高齢者・障がい者問題とアイズの役割


高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員長
新  信   聡

1 当会では、支援弁護士名簿に登録された弁護士が高齢者・障がい者の権利擁護活動において極めて重要な役割を担っているが、そのことは以下の各種統計からもうかがうことができる。高齢者・障がい者法律相談、及び「ほっとくん」の担当者は必ずしも支援弁護士ではないものの、過半数が支援弁護士である。

2 成年後見人等の推薦件数

(1) 年度別推薦件数

家庭裁判所及び名古屋市から成年後見人等の推薦依頼があった場合、当会は支援弁護士の中から候補者を選んで推薦するが、推薦件数を見ると、平成12年度から平成25年度にかけてほぼ順調に増加してきており、平成23年度からは急激に増加し、特に平成24年度は過去最高の233件にも上っている。

(2) 種類別推薦件数

種類別に見ると、件数的に圧倒的に多いのは成年後見人であり、次に成年後見監督人、保佐人、保佐監督人等が続いている。監督人(後見、保佐、補助、任意後見)の割合が高いのは、家庭裁判所が支援弁護士による後見人(主に親族)等への監督機能に期待していることの表れと捉えることができる。

(3) 支援弁護士数と後見人等への就任人数・推薦件数

平成25年11月22日現在、支援弁護士数は373名であり、50期代後半以降が多い。そのうち後見人等に就任しているのは合計284名、後見人等への推薦件数は1136件であり、支援弁護士1人当たりの推薦件数は平均3件である。後見人等への就任人数では60期〜62期が特に多いものの、60期〜62期の支援弁護士数が多いために1人あたりの推薦件数は平均値を下回っている。

3 高齢者・障がい者法律相談件数

(1) 高齢者・障がい者(親族等の支援者を含む)からの電話相談、面談相談、出張相談の利用件数は、平成11年度以降、年によってばらつきはあるが、平成21年度をピークとして減少傾向にある。特に、法律相談センターでの面談相談は長期的な減少傾向が続いている。相談件数の減少問題はひとり高齢者・障がい者の分野だけでなく、名古屋法律相談センター全体に及ぶ問題であり、その要因をここで分析することは困難であるが、高齢者・障がい者にとっては、アクセスの困難さが大きな要因であることは否定できない。また、高齢者・障がい者がアクセスしやすい広報活動の充実も必要である。

(2)「ほっとくん」は、アイズが実施する福祉専門職(行政や地域包括支援センター等を含む)向けのFAX相談であり、毎年一定数の相談があり定着している。統計上は平成24年度から件数が減少しているが、これは後述の地域包括支援センター法律支援業務が平成24年度から開始されたことで、地域包括支援センターからの相談が担当弁護士に直接送られるようになったことが大きな原因と思われる。

4 地域包括支援センター法律支援業務

同支援業務は、平成24年5月から開始され25年10月までの相談件数は合計156件で、相談方法別では電話が67件で最も多く、FAX42件、面談24件、出張23件と続く。相談内容別では、成年後見が最も多く56件、財産管理40件、その他24件、多重債務15件、虐待14件、遺言・相続10件等が続く。研修会や講演への講師派遣が22件、地域包括や市町村での個別のケース会議(虐待、成年後見等)への出席は19件である。


5 以上のデータから、当会が、高齢者・障がい者の他、家庭裁判所や地域包括支援センター・行政・福祉施設等の関係機関から大きな信頼を寄せられ、高齢者・障がい者の権利擁護という視座に立って多方面で活発に取り組んでいる実態が見てとれる。