日本を語る
〜先の見えない時代を探る〜
広報委員会 委員
平 田 伸 男
- 1 はじめに
- 10月27日、中区役所ホールにおいて、名古屋市と当会との共催で法の日週間記念行事が開催された。テレビ等にも多数出演しておられる日本文学研究者のロバート・キャンベルさんをお迎えしたところ、500人近くの来場者があり、大盛況の記念行事となった。
- 2 第1部(ロバート・キャンベルさん講演)
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第1部ではロバート・キャンベルさんが登壇され、「今だからこそ日本文学を学ぶ」と題して、専門とされている江戸から明治にかけての日本文学に関する講演が行なわれた。
その中で、現代において、文学・読書は、個人で学び知識を高めるものであるのに対して、江戸時代においては、昌平坂学問所を例に、作られた漢詩に作者以外の者がコメントを書き込んでより良いものにしていくなど、他者と関わり合いながら文学を学んでいたことなどが紹介された。現代と近代の文学の学び方に対する違いを発見でき、大変興味深いものであった。
- 3 第2部(パネルディスカッション)
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第2部では、多文化共生、多民族共生をテーマに、明玉会員をコーディネーターとして、ロバート・キャンベルさん、笹尾菜穂子会員をパネリストとして、パネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッションでは、来場者から様々な質問があり、カナダに留学の経験がある笹尾会員からは留学中浴びるように外国語を聞いて外国語を習得されたことなどが、ロバート
・ キャンベルさんからは、日本語は語彙が他の言語に比べると非常に多く、今でも日々学びや発見があることなどが語られた。
また、日本語は謙譲語や尊敬語で自分の立場を認識しながら話すことや、日本人独特の感性として白色を様々な色に染めるという感覚のことなどの指摘もあり、普段日本で生活しているだけでは気付くことが出来ない様々な発見があった。
また、現在問題となっているヘイトスピーチについても来場者から質問があり、ドイツにおけるナチスによる表現規制などの例を挙げられながら、特定の個人へ向けられていない侮辱表現等に関し、表現の自由との兼ね合いでそもそも規制すべきなのか、特定の個人を中傷する表現行為のみを規制の対象とするべきなのかなどの点について、一般の来場者の方にも問題点が分かりやすい説明がなされた。
- 4 最後に
ロバート・キャンベルさんの講演やパネルディスカッションを聴いて、日本人が日本人としてのアイデンティティを持ちながらも、異なる文化を受け容れ、互いに社会の役割を担っていくことが多文化共生の一歩になると感じた。