会報「SOPHIA」 平成25年10月号より

第56回日弁連人権擁護大会(広島市)が開催される


会 員 榎  本   修

10月3、4日に第56回日弁連人権擁護大会が開催された。原爆ドームにほど近い広島国際会議場に全国から弁護士が多数集まり、人権擁護に関し様々な報告と討議が行われた。

1 分科会の開催(3日)
ヒロシマからフクシマを考える第1分科会「放射能による人権侵害の根絶を目指して」では、当会の藤川誠二会員(61期)が福島原発事故につき壇上から報告するなど、7時間に亘る詳細な報告と討議が行われた。集団的自衛権を認める憲法改正草案等につき議論した第2分科会「なぜ、今『国防軍』なのか」、貧困と格差が拡大する中で幸福追求権、平等権、生存権等を背景にこれからの日本の社会のあり方を検討した第3分科会「『不平等』社会・日本の克服」でも詳細な報告と積極的な討論が行われた。

2 人権擁護大会(4日)

(1) 事業活動報告(人権擁護活動)

190頁、40項目に亘る報告書の概要が概説され、「名張事件−第7次再審・第2次特別抗告審の現状−」(当会鈴木泉会員執筆)が掲載された「再審通信」、本年4月16日の新たな最高裁判決を踏まえて今月開催された「すべての水俣病被害者の全面救済を求めるシンポジウム」(人権擁護委員会・公害対策環境保全委員会主催)報告書が配布された。

(2) 特別報告

@法制審議会(新時代の刑事司法制度特別部会)に関する件、A憲法改正をめぐる最近の情勢、B「特定秘密の保護に関する法律案」に関する件につき、それぞれ報告された。

(3) 決議

前日の3分科会のシンポを踏まえて以下の3つの決議が採択された。

@ 福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める決議(東電は原子力紛争解決センターが提示した和解案を尊重し誠実に履行すること、国は消滅時効特別措置法、賠償金非課税等の立法措置、広島長崎の被ばく者援護の経緯に鑑み労働者・子ども等あらゆる人に対する健康被害を未然に防ぐ措置を講ずるとともに、原子力政策を抜本的に見直し、再稼働を許さず核燃料サイクルと原子力発電から撤退すること等を求めるもの)。

A 恒久平和主義、基本的人権の意義を確認し、「国防軍」の創設に反対する決議(弁護士法の「基本的人権の擁護と社会正義の実現」との使命に立脚し、平和的生存権や恒久的平和主義・基本的人権の重要性を確認し、「国防軍」創設に反対するもの)。なお、当決議は当会纐纈和義会員の賛成討論の後、可決された。

B 貧困と格差が拡大する不平等社会の克服を目指す決議(社会保障基本法の早急な制定、不動産所得税の減税措置等の見直しなど担税力に応じた税制の再構築、政策形成への関係当事者が対等な参画を図るための措置を講ずること等を求めるもの)。
また、上記決議A及び特別報告Aに関連して、下記決議が採択された。

C 立憲主義の見地から憲法改正発議要件の緩和に反対する決議(基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士・弁護士会で構成される日弁連として、憲法改正発議要件の緩和が、立憲主義を覆すおそれがあることを憂慮し憲法96条の改正提案に反対するもの)。


3 来年は函館
最後に、来年の人権擁護大会を10月2、3日に北海道函館市で開催することを決議して閉会となった。