自殺予防週間における全国一斉「暮らしとこころの相談会」報告
貧困問題・多重債務対策本部 本部長代行 柘 植 直 也
同 委員 安 田 庄一郎
- 1 はじめに
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9月10日(水)午前10時から午後6時まで、当会会館において、電話と面接による「暮らしとこころの相談会」を実施しました。
この相談会は日弁連の呼びかけにより、9月10日から一週間の「自殺予防週間」に併せて全国で一斉に実施されました。当会では今年3月に続いて3回目です。
わが国の自殺者数は、1998年から一昨年まで14年連続で3万人を超えており、昨年こそ約2万8000人と若干減少したものの、依然高水準にあることに変わりありません。
今年に入って、失業率も低下するなど雇用環境の一定の改善も見られますが、他方で、非正規雇用が増加し、雇用不安は依然として何ら解決していない状況です。また、今年8月から生活保護費の引き下げが行われ、来年には消費税の増税が予定されるなど、貧困問題はより深刻になっており、その他、暴力、虐待、いじめなどの自殺の背景となる要因も何ら解決されていません。
このような状況で、自殺につながるおそれのある様々な悩みを抱えた方々の相談を受けることの多い我々弁護士は、相談の中で問題解決の手助けをするとともに、同じように自殺の問題に取り組む専門職の方々と連携し、自殺の防止に努めることが期待されています。
そこで、このような自殺対策の一環として今回の相談会を開催しました。そして、9月4日には愛知県臨床心理士会会長の石川健司氏を講師にお招きして自殺予防のための学習会を開催し、心の悩みを抱える方の相談の心構えを学び、相談会当日も愛知県臨床心理士会から臨床心理士の方1名、愛知県精神保健福祉士協会から精神保健福祉士の方2名をアドバイザー、カウンセラーとして派遣していただき、当会会員の相談員21名に対し、アドバイスをして頂いたり、直接電話に出て頂いたケースもありました。
- 2.相談件数と内容
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当日の相談件数は38件(うち、面談相談が8件)であり、今年3月の相談会に比べ相談件数は大幅に増加しました。
相談の内容も、生活苦・生活保護に関する相談、借金・多重債務に関する相談など、不況による生活不安に起因する相談が多数を占めました。
- 3.臨床心理士、精神保健福祉士の方との協力態勢について
お越し頂いた臨床心理士、精神保健福祉士の方には、当初は、別室に控えて頂き、弁護士の相談員が電話相談や面接相談で対応に苦慮した際に、アドバイスを頂いたり、一緒に相談に入って頂いたりする態勢をとっていました。しかし、別室だと、せっかくお越し頂いたのに、相談の様子等が伝わらず、手持ち無沙汰にされている状況で、とてももったいなく感じました。そこで、途中からは、電話相談室に同席していただくようにしました。そうしたところ、臨床心理士、精神保健福祉士の方々は、臨機応変に弁護士相談員にメモを渡す等してアドバイスして下さいました。また、相談者が心に不安を抱えているようなケースでは、カウンセラーが同席していることを弁護士相談員から相談者に告げ、希望に応じ臨床心理士等に電話を替わることも積極的に行いました。その結果、相談者の需要にも応えた充実した相談となりました。今後も互いの専門分野を活かし協働していくことで、より効果的な相談が出来るようにしていきたいと思います。