会報「SOPHIA」 平成25年6月号より

公害対策・環境保全委員会 六ヶ所村視察

プレシンポ「核のゴミとどう向き合うか 原子力発電所からの放射性廃棄物について考える」にむけて

公害対策・環境保全委員会 委員
家 田 大 輔

 

1 はじめに

6月9日に、公害対策・環境保全委員会委員が、青森県上北郡六ヶ所村の視察をした。今回の視察は、9月7日に放射性廃棄物の問題をテーマにした人権大会のプレシンポを開催するための準備として、核燃料サイクル施設が集中している六ヶ所村の現状を把握するためのものである。放射性廃棄物の問題は、原子力発電を行った以上、原発を推進する立場に立っても、反対する立場に立っても避けることのできない問題である。長期間にわたる管理を必要とするため、将来世代に対する責任も発生する。


2 六ヶ所村視察に向けて

(1) 法政大学舩橋教授の研究室

六ヶ所村に行くのに先だって、6月8日に法政大学の市ヶ谷キャンパスにて、舩橋晴俊教授の研究室を訪れた。舩橋教授には、プレシンポでの基調講演を依頼しているが、その打ち合わせと併せて、核燃料サイクル施設の3つの視点としての総量管理、暫定保管及び科学の限界の自覚の説明や、また、合意形成の過程や様々な意見を有する者で議論をすることの必要性をお話しいただいた。詳細は、プレシンポで話されるであろう。プレシンポでは、多様な意見の議論も行われる予定である。


(2) 学習会

ア 舩橋教授の研究室を訪れた後、青森県三沢市に行き,核燃料サイクル阻止1万人訴訟原告団の事務局長をしている山田清彦さんによる、六ヶ所村をめぐる状況、核再処理についての学習会に参加した。以下、この学習会で学んだ内容について、簡単にまとまめる。  

イ 核燃料サイクルについて

核燃料サイクルは、原子力発電所で使い終わった燃料(使用済燃料)に消費されなかったウランや新たに生成されたプルトニウムが95〜97%含まれていることから、再処理を施せば、再利用できるという、ウラン資源のリサイクルの流れである。しかし、実現が難しく、多くの原子力先進国が撤退している。

ウ 中間貯蔵であること

2008年に三村青森県知事が、当時の経産相と面会し、「青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分地にしない」という確約書を受け取った。六ヶ所高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで高レベル放射性廃棄物ガラス固化体を30年間から50年間の一時貯蔵を終え、最終処分地に排出する計画である。しかし、最終処分地はまだ決まっていない。

エ 原子力産業への依存

青森県が核廃棄物を受け入れることは税収につながる。いったん受け入ると、撤廃しない限り核廃棄物が搬入され、税収が入ってくる状態にある。社会的なインフラの整備にかかる費用を、核廃棄物を受け入れて捻出するという事態になっている。

オ 米軍三沢基地に隣接する恐怖

米軍三沢基地は、六ヶ所村核燃料サイクル施設から半径30キロ圏内に位置しており、戦闘機が同施設の敷地内上空を飛来する危険がある。

カ 断層の存在

下北半島には,いくつかの活断層が走っていると指摘がある。敦賀原発の活断層の調査手法が影響するそうである。また、地盤の脆さも指摘され、安全審査も問題にされている。


3 核燃料サイクル施設と原発の視察

(1) はじめに

上記のような基本的な知識のレクチャーを受けて、翌6月8日に、一日かけて、六ヶ所村周辺の核関連施設の視察をした。帰りの飛行機の時間の都合上、大間原発(フルMOX原発)には行くことができなかったものの、それ以外の核燃料サイクル施設と原発等を視察することができた。これは、核関連施設が、半径30q圏内に集中して立地しているからである。以下、視察の様子について報告する。

(2) むつ小川原港と再処理工場

むつ小川原港において、使用済燃料容器を海上運輸し、荷降ろしする。その後、使用済核燃料は、専用通路を通って、再処理工場(上記写真)に運び入れられる。

再処理工場の近くに、低レベル放射性廃棄物埋蔵センター、ウラン濃縮センターがあり、核燃料サイクル施設が密集している。これは、むつ小川原で、石油科学コンビナート建設計画があり、用地買収と漁業補償が完了したが、計画が挫折した経緯があり、その用地に核燃料サイクル施設が設計されたためである。

(3) 東通原発

続いて、再処理工場からPR館を経て、東通原発に向かった。再処理工場の近くには、民家が立ち並んでいた。核関連施設に反対する看板は1つあったのみである。

東通原発1号機(東北電力)は、東日本大震災発生時は定期検査中のため運転していなかった。現在も運転していない。また、2号機(東京電力)は、東日本大震災の影響により、予定されていた本格工事の開始を見合わせた。


(4) リサイクル燃料備蓄センター

使用済燃料は、再処理するまでの間、原子力発電所の敷地内で貯蔵される。しかし、使用済燃料の発生量は長期的に増加する見通しであるため、原子力発電所外にも貯蔵・管理する中間貯蔵施設が必要となる。現在、リサイクル燃料備蓄センターの建設工事が行われている。


(5) むつ科学館

最後に、むつ科学館にて、原子力船むつの使用済原子炉が展示されているのを見学した。

(6) おわりに

普段何気なく使ってきた電気の発電の際に生じた放射性廃棄物が、六ヶ所村に集められていることを実感した視察であった。現に存在する核廃棄物をどのように扱っていくべきか、難しい問題であるが、プレシンポで学びたいと思う。