全国一斉暮らしとこころの相談会報告
貧困問題・多重債務対策本部 本部長代行
柘植 直也
1 はじめに
3月14日(木)午前10時から午後6時まで、当会会館において、電話と面談による「暮らしとこころの相談会」を実施した。 この相談会は、日弁連の呼びかけにより、3月の「自殺対策強化月間」に合わせて全国一斉に実施されたものであり、当会としては昨年9月に続いて2回目である。 わが国では、1998年から昨年まで14年連続で自殺者が3万人を超え、昨年約2万7858人と若干減少したものの、相変わらず非常に多いことに変わりはない。 自殺の背景にある貧困や人間関係、暴力、いじめ、雇用不安等の社会的要因は何ら解決されておらず、予防策も甚だ不十分なままである。
このような中で、自殺に繋がるおそれもある様々な悩みを抱えた方々の相談を受ける機会が多い我々弁護士としては、常に相談を受け問題解決の手助けをするとともに、自殺等の問題に取り組む様々な専門職、ネットワーク等と連携し、繋ぐ役割が期待される。そのような活動を少しでも発展させるため今回の相談会を実施した。 実施前の2月5日には、精神保健福祉士の中住正紀氏を講師に勉強会を実施した。 そして、相談会に当たっては、アドバイザーとして、愛知県臨床心理士会から臨床心理士の方2名、愛知県精神保健福祉士協会から精神保健福祉士の方1名を派遣していただき、弁護士相談員19名に対し、様々なアドバイスをしていただいた。2 相談件数、内容等
当日の相談件数は、面談5件、電話16件、合計21件であった。 昨年9月の実施時と比較すると件数は少なかったが、深刻な内容の相談ばかりであった。 内訳としては、生活苦・生活保護に関するものが7件と最も多く、続いて借金・多重債務に関するものが5件、失業に関するものが2件、倒産に関するもの2件、解雇に関する労働問題1件、役所の窓口の対応に対する相談1件、近所との間の人間関係のトラブルが1件、その他2件であった。 特に目立ったのが、生活保護の窓口や担当者、ハローワークの窓口の対応が不適切と思われ、そのために、生活苦に加えて窓口対応のために精神的に追いつめられているケースが複数あったことである。 中には、そのためにリストカットにまで至ったというケースもあった。 また、面談相談の中にも、生活保護ケースワーカーの対応が明らかに不適切と思われるケースがあり、弁護士と精神保健福祉士が相談に入り、その場で担当ケースワーカーに電話をして抗議をするとともに、専門家ネットワークを活用して、適切にフォローできたケースもあった。
3 感想等
当会の自殺予防を念頭に置いた相談活動は2回目であり、まだ緒に就いたばかりである。今回相談のあった件は、いずれも深刻な内容を含むものであり、相談者の方々が藁をもつかむ思いで相談されていることがひしひしと伝わってきた。 当会として、今後も、継続的に勉強会を続けていき、弁護士会が自殺予防に関する相談の受け皿として認知されるよう態勢を整えていくとともに、相談を受けた案件につき適切な機関に繋げることができるようネットワークを構築していく必要性を感じた。 現段階では、年2回の相談会が精一杯の状況であるが、将来的には、当会が、自殺予防や、さらには自死遺族の方々の二次被害も含めた相談に対する常設の窓口を開く必要があると痛感させられた。