会報「SOPHIA」 平成25年4月号より

シンポジウム 強いられた死のない社会

〜「自殺」をなくすために私たちができること〜

会員  菊 田 直 樹

1 第1部

 3月2日、強い風の吹く中、本シンポジウムが開催されました。

(1) 基調講演

  基調講演は、全国自死遺族連絡会世話人田中幸子氏による、ご自身の体験を踏まえた、自殺=自死を防止するためのあるべき姿についてであった。 田中氏からは、自死防止のためには、精神医療も重要だが、労働問題等の社会的要因の解決が先であり、行政全体の連携が必要であることが説明された。 また、相談の現場では、相談の窓口に来られた方を孤立させないようにすることが肝要であるとのお話があった。

(2) 遺族の訴え

  遺族の訴えでは、全国過労死を考える家族の会代表世話人である寺西笑子氏にご登壇いただいた。 寺西氏は、夫を過労自死で亡くされており、真相を解明し夫の名誉を回復するための訴訟を通じて、自死への偏見をなくし、過労死をなくす取り組みを続けて来られた。 相談に当たっては、自死遺族の心情を理解し、寄り添ってあげてほしいとの寺西氏の発言から、弁護士が、自死遺族に対する偏見をなくすための支援をしていく必要性・重要性を感じた。

(3) 行政の取り組み

  岐阜県健康福祉部保健医療課精神保健福祉係の森稚加子氏から、岐阜県では、様々な部署から人員を集め、総合対策協議会を開き、自死問題に取り組んでいることが説明された。 また、自死防止のための支援を行う人材養成事業としてゲートキーパー推進事業も紹介された。

2 第2部

  第2部では、田中氏、寺西氏に加え、精神保健福祉士の青木邦子氏と森弘典会員を加えたパネルディスカッションが行われた。  パネルディスカッションでは、青木氏から「精神障がい」の原因や特性についてわかりやすく解説していただいた。また、会場内から多数の質問が寄せられた。  弁護士の役割について、自死に対する偏見をなくすための活動や法改正等に積極的に取り組んでもらいたい、勇気を出して相談に来た遺族に寄り添ってほしいとの意見が出された。 また、青木氏からは、事件解決後にも自死遺族らと寄り添っていく必要があることから、精神保健福祉士の相談から事件終了後まで、精神保健福祉士と弁護士との協力支援が必要であるとの意見が述べられた。

3 シンポジウムの感想

  今回のシンポジウムでは、自死遺族との関係だけでなく、行政や精神保健福祉士等との関係においても、弁護士が連携を図る必要や、今後、弁護士が自死防止のために取り組むべき課題が明確になったため、大きな意義があったと感じた。 また、ご参加頂いた方々から、今後も今回の様なシンポジウムの開催を希望される声を多数頂き、世間の関心の高さや、今後も積極的に自死防止の為の活動を行う必要性を感じた。