会報「SOPHIA」 平成25年3月号より

「全国一斉投資被害110番」開催される

消費者委員会 委員
名古屋先物証券問題研究会
会員 岸 本 博 道

1 はじめに

2月21日、22日の2日間、当会会館において、当会及び名古屋先物証券問題研究会の共催で「全国一斉投資被害110番」が開催されました。

今回の110番は、投資被害の予防・救済に取り組む全国の弁護士が結成する研究団体である先物取引被害全国研究会の呼びかけのもと、全国各地で一斉に開催されたものです。

2 110番実施の趣旨

平成23年1月に改正商品先物取引法が施行され、不招請勧誘禁止が導入されるなどしましたが、同勧誘禁止の潜脱事案(金の現物取引の不招請勧誘を行って取引を開始させた後に通常の先物取引に乗り換えさせる、投資信託の電話勧誘販売からFX取引に引きずり込む等)は多数報告されており、未だ被害の根絶には至っていません。かえって、不招請勧誘の禁止自体について見直しをさせようとする業界の動きもあり、被害実態の把握と救済が急務となっています。

詐欺的投資被害の事案では、口座凍結される振込送金を回避するため、被害者宅を訪問して直接現金で集金するといった大胆な手口も広がりつつあり、相変わらず多数の相談が寄せられています。また、証券取引分野では、仕組債等の被害も増加しています。

今回の110番は、これらの投資被害の実態を調査して、救済を図るとともに、立法への働き掛け等につなげていくための資料とする目的で行われたものです。

3 110番の結果

愛知県の相談件数は、詐欺的投資被害15件(未公開株9件、社債3件、ファンド1件、マンション投資1件、リース関連1件)、商品先物取引1件、株式取引1件、投資信託1件、不明1件の計19件でした。

被害者の年齢層は、30代1名、40代1名、50代2名、60代6名、80代5名、90代1名、不明3名でした。

相談内容としては、詐欺的勧誘、執拗な勧誘や説明義務違反等、勧誘時に問題のあるものが多く見られました。

4 投資被害の実態

今回の110番の相談者の多くは高齢者であり、これは全国的な傾向とも一致するところです。核家族化により独居高齢者や高齢者のみの世帯が増える中、人の良さや判断能力の衰えに乗じた勧誘等により、高齢者がターゲットとなった投資被害事案が多く見られます。長年、将来に備えて貯蓄してきた資金が根こそぎ奪われることで、被害額が高額となることも少なくありません。他方で、勧誘方法の多様化等により、比較的若い世代が投資被害に遭うことも珍しくありません。

5 おわりに

電話で相談者の説明を聞くだけでは、取引の経緯や被害の実態がほとんど把握できないこともあり、複雑・巧妙な被害事案の救済のためには、日々の新たな知識の習得や情報収集が大切であると感じました。

110番初日後の夕方のニュースの反響により、翌日の相談件数が急増したことからも、投資被害が潜在的に多数生じていることは明らかです。

今回の110番に参加したことで、今後も引き続き投資被害の実態を調査して、その救済を図っていくことが必要不可欠であると改めて認識することになりました。