木曽岬干拓地に行ってきました
公害対策・環境保全委員会 委員
嶌 将 周
- 1 木曽岬干拓地をご存じですか?
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愛知県(弥富市)と三重県(桑名市、木曽岬町)にまたがる広さ443haに及ぶ干拓地です。もともと農業用地とする目的で昭和40年代に干陸されたものの、県境争いと農業の衰退により放置されていました。現在同干拓地を所有する愛知県と三重県は、公園施設や新エネルギーランドとして整備することを計画し、一部で盛土も始まっています。
1月27日、当会と三重弁護士会の公害対策・環境保全委員会の委員等15名は、日本野鳥の会の探鳥会に同行させていただき、同干拓地のうちの約80haを利用した新エネルギーランド=最大出力約50MWの巨大太陽光発電基地の予定地を視察してきました。
- 2 木曽岬干拓地の自然
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同干拓地は、木曽川河口の貴重な干潟を閉め切り人工的に干陸された土地ですが、長年放置されてきたため「自然」化し、東海地方では稀な沿海部の湿性草原が復元しています。
愛知県と三重県が平成18年1月にまとめた『木曽岬干拓地に係る環境影響に関する評価書』では、同干拓地にはチュウヒ※など希少な鳥類等が生息したことから、事業実施においては、これらの鳥類等への保全措置が必要だとされました。そこで、同干拓地の一部が保全区として整備されています。
- 3 チュウヒに会えました
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視察では、日本野鳥の会の近藤義孝さんを始めとする皆さんにご案内いただき、同干拓地を含む周辺域で、40種を超える鳥たちの姿を見ることができました。幸運にも、大空を舞うチュウヒやさらに珍しいハイイロチュウヒにも会えました。
- 4 チュウヒにまた会えるか
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整備された保全区は同干拓地南端部の約50haにすぎず、大半は開発、最終的には盛土利用される計画です。日本野鳥の会の調査によれば、依然チュウヒの複数つがいが繁殖行動を続けているものの、保全区が整備された平成21年以降、繁殖は成功しておらず、保全区だけでは1つがいすら繁殖できないことが明らかとなっています。近藤さんは、このまま開発が進めば、チュウヒは絶滅してしまうと訴えていました。
- 5 感想など
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福島第一原発事故を受け、原子力発電に代わる再生可能エネルギーの開発が急務となっています。今回の計画もその流れの一環です。
当委員会としても、脱原発・再生可能エネルギー推進には賛成です。しかし、再生可能エネルギーであれば、常に環境に優しいとは限りません。例えば風力発電では、山の尾根や海岸など比較的自然豊かな場所に建設されることに加え、バードストライクや低周波騒音の問題も指摘されています。
私個人としては、木曽岬干拓地のような都市近郊の貴重な、生物多様性の保全上重要な環境を犠牲にしなくても、太陽光発電基地となる場所はあるはずで、計画を再検討すべきではないかと思いました。