紛争解決センター15周年記念行事
「使ってみようADR〜高齢者をめぐるトラブルあれこれ〜」が開催されました
紛争解決センター運営委員会 委員
小 林 智 哉
- 1 はじめに
- 12月22日、中区役所ホールにて、紛争解決センター15周年記念行事「使ってみようADR〜高齢者をめぐるトラブルあれこれ〜」が開催され、約220名にご参加いただきました。
本行事では、高齢者をめぐるトラブルをテーマに、@劇により紛争解決センターにおける解決事例を分かり易く紹介した後、Aパネルディスカッションで高齢者に関与する者がどのような役割を果たしており、また果たせるのかにつき検討されるとともに、紛争解決センターの更なる利用可能性が提言されました。 - 2 @劇「景子の願い」
- 劇では、主人公景子の祖母花子の認知症にまつわるトラブルが取り上げられました。
花子は、食事をとったことを忘れて同居の長男夫婦へ「ご飯はまだ?」と要求するのですが食事は与えられません。そこで花子は、別居中の長女へ「ご飯を食べさせて貰えない」と電話をします。長女は直ぐ実家に赴きますが、長男夫婦は事情を知らずに口を挟む長女へ憤り、出入り禁止にしました。これを見かねた景子の薦めにより、長男夫婦は、長女との関係を調整すべく紛争解決センターへ申立てをします。期日には、弁護士だけでなく社会福祉士も専門家あっせん・仲裁人として同席し、当事者へ認知症に関する知見が示されつつ、花子の様子を理解するために、長女が1週間程度母親と同居してみるという提案がされました。次の期日には、花子の状況を理解した長女が、長男夫婦へ謝罪をし、長男夫婦の負担を減らすために、今後は月に1回・1週間程度花子を預かることとなり、事件は紛争解決センターにて円満解決となりました。
会場からは熱演した俳優陣(特に海パン姿の某会員)に盛大な拍手が送られました。 - 3 Aパネルディスカッション
- パネルディスカッションでは、特別養護老人ホーム南生苑施設長の阿閉芳信さん、名古屋市健康福祉局認知症対策・地域ケア推進室長の小杉政已さん、社会福祉士の村井ひとみさんと当会の水野聡会員がパネラーとなり、(ア)まず、高齢者の家族間において、認知症に関する理解不足や介護に対する意見の相違等を原因とするトラブルがあり、家族間のトラブルについては、行政の把握・介入が難しく、デイケアでは把握が可能であるものの費用がかかる点が指摘されました。(イ)また、虐待についても、介護に対する不公平感を取り除くべく、家族間の話し合いが大事であることが確認されました。(ウ)次いで、高齢者が被害者となる消費者事件について地域包括支援センターと消費生活センターとの連携対応が報告されました。(エ)さらに、高齢者施設に対する権利意識が高まったため、高齢者施設と家族とのトラブルが散見されるようになったとの報告もありました。
最後に、トラ多くの方に紛争解決センターが利用され、そして、無事に20周年記念行事が迎えられますように。ブル解決の一手段として、紛争解決センターの有用性が確認されました。 - 4 終わりに
- 本行事では、高齢者をめぐるトラブルという、市民の方々にも身近で、かつ裁判手続による解決が難しいテーマにつき、紛争解決センターの利用を提言したことによって、弁護士のみならず、市民の方々にも、紛争解決センターをより一層身近に感じてもらえたと思います。今後も多くの方に紛争解決センターが利用され、そして、無事に20周年記念行事が迎えられますように。