会報「SOPHIA」 平成24年12月号より

犯罪被害者支援連載シリーズ46

「なぜ、犯罪は繰り返されるのか」

〜犯罪被害者が見つめる更生、再犯の防止

 

犯罪被害者支援委員会 委員長
長谷川 桂 子


12月22日、当会も後援している「第12回いのちかなでる」(犯罪被害者自助グループ「緒あしす」主催)が開催された。パネルディスカッションのテーマは「なぜ、犯罪は繰り返されるのか」。メンバーの中に加害者の再犯を体験したメンバーが出てきたということで、再犯防止について危機感を共有し共に考えて欲しいためにこのテーマを選んだとのことである。


パネラーとして、加害者に娘さんを殺害された永谷博司・恵子ご夫妻、その事件を取材したノンフィクションライターの藤井誠二氏、矯正の現場で改善教育指導等を実践している太幡淳一法務事務官、保護観察官の経歴をもち、被害者自助グループ活動を中心としたNPO法人の理事長である川武ュ宏弁護士が登壇した。


出所後送られて来た数通の手紙が気持ちを逆撫でするような内容であったことに心を痛めていたところへ再犯のニュースを受けた永谷夫妻のお話から、加害者の再犯が遺族に与える傷の大きさが伺えた。


社会に出て来る以上、更生すること、二度と犯罪を犯さないことは勿論、事件を忘れず、きちんと向き合って謝罪をして欲しい。再犯はその願いとは正反対の出来事だ。


藤井氏から、刑事裁判の過程で精神鑑定等で明らかになった加害者本人や生育環境についての問題性が刑務所内での矯正教育、出所後の環境調整に生かされず、加害者が漫然と元の生活環境に戻り、更生への支援を受けることもなく再犯に至った点が指摘された。


太幡氏から、現在刑務所で行われている「被害者の視点を取り入れた教育」についての説明があった。目的は被害者に誠意をもって対応することと再犯の防止であり、具体的には、自分の事件を加害行為として見つめ直し加害者としての責任重大性を自覚させること、被害者に生ずる問題を理解し被害者の置かれている状況を現実的なものとして認識させること、加害者として被害者に何をすべきか具体的に考えさせること、考え方の偏り、生活面などの問題点を認識させ、二度と加害者とならないため何をすべきか考え実行の決意を固めさせること等を内容としているとのことであった。


しかし、川封ル護士が指摘するように、どこまで受刑者一人一人の個別の問題性に向き合えるかという限界も存在するようである。個別の問題を顕在化して社会内処遇につなげることができればという問題意識が示された。


加害者の真の更生、再犯の防止は出所後が勝負であろう。


藤井氏から、本年7月犯罪対策閣僚会議において決定された「再犯防止に向けた総合対策」について紹介があり、国が最も重点を置いているのは出所後の就労と居住の対策であるが、医療や教育の継続を担保することができないこと、「満期」出所の問題など、まだまだ対策として穴があるとの指摘がなされた。


永谷博司氏からも、加害者がいきなり「満期」出所ではなく保護観察付きの仮出所の経験を重ねていればと、更生のための社会的訓練としての仮出所を経ることが示唆された。


再犯防止は難しい問題である。


就労・住居の確保等の生活の基盤を確保することが再犯防止として重要であることは再犯者の統計からも明らかである。しかし、困難に直面した時に再び犯罪への一線を越えることを押しとどめるものは何であろうか。


加害者がいかに被害者に対する償いの思いを持ち続けるか、これを忘れると再犯防止の本質を見失うと語った川封ル護士の言葉が印象に残った。