人権擁護大会
シンポジウム第2分科会
「自殺への自由」から「自殺からの自由」へ
〜強いられた死のない社会をめざして〜
日弁連人権擁護大会シンポジウム第2分科会実行委員
日弁連貧困問題・多重債務対策本部副本部長
森 弘 典
- 1 はじめに〜「強いられた死」は人権問題
-
シンポジウム「強いられた死のない社会をめざして」には、高校生800名を含む約1400名が参加されました。依頼者、親友などを自死でなくし、自死について何とかしていきたいと考えていた私は、シンポジウム実行委員として関わりました。
自殺者は14年連続で3万人を超えています。これはもはや個人的な問題(「自殺への自由」)ではなく、社会的な要因による「追い込まれた末の死」(自殺対策基本法、自殺総合対策大綱)であり、人権としての「強いられた死を防止するよう求める権利」「自殺からの自由」が侵害されているといえます。
- 2 基調講演〜日本社会の病巣と命の大切さ
-
第1部「基調講演」では、深夜の繁華街のパトロールを通して約24万人の若者たちに接し、非行・薬物汚染・心の問題に関わってきた「夜回り先生」水谷修氏が講演されました。その精力的な活動に裏付けられた話は非常に説得力があり、来場者を引きつけました。
水谷氏は、20年以上にわたる不況で社会全体に余裕がなくなり、いじめが起き、そのはけ口を家庭に求め、その結果子どもたちは学校でも家庭でも追いつめられてしまうと述べ、環境要因の改善に取り組まなければ根本的解決にはならないと訴えました。
- 3 基調報告、海外調査報告、特別報告
-
第2部「報告」では、まず「基調報告」として、実行委員会の古本晴英事務局長から、自殺の原因は、社会的要因が大きな割合を占めていること、社会的要因による自殺については、幅広いネットワークの構築が必要であること、弁護士自身が自殺対策についてのスキル向上が必要であることを訴えました。なお、シンポジウム翌日の人権擁護大会では、国や自治体に自殺予防、自死遺族支援策の強化を求めるとともに、弁護士や弁護士会が自殺予防に取り組んで行くことを決意する決議が採択されました。
次に、実行委員会が行ったフィンランド、韓国の「海外調査報告」を私が行いました。
そして、「特別報告」では、土井浩之実行委員が東日本大震災被災地の現状を、茂幸雄氏が自殺の現場「東尋坊」での自殺予防の取組みを、西垣迪世氏が過労死防止基本法制定の取組みを報告しました。内閣府からは自殺総合対策大綱の見直しについて報告がありました。
- 4 パネルディスカッション
-
第3部「パネルディスカッション」では、清水康之氏(ライフリンク代表)、生水裕美氏(消費生活相談員)、弘中照美氏(多重債務による自死をなくす会)、大塚耕太郎氏(精神科医)をパネリストとして議論が交わされました。
議論を通して、様々な問題について丁寧に聴く相談が必要であること、支援従事者のメンタルの対策も必要であること、異業種異分野の人たちが広く連携することが必要であること、弁護士が施策について様々な発案をし取組みの核になる必要があることが、確認できたと思います。
- 5 今後の取組み
-
今後は、人権擁護大会で終止符を打つのではなく、採択された決議を実現するために活動していく予定です。
当会では、ポスト・シンポジウムを3月に開催する予定です。是非ご参加ください。