人権擁護大会
第55回日弁連人権擁護大会が開催される
会員 浅 賀 哲
10月4日、5日、佐賀市において、第55回日弁連人権擁護大会が開催されました。
- 1 分科会の開催(4日)
- 第1分科会は、学校教育の現場で、教育の内容に対する行政の関与が強まるとともに、教師に対する教育統制の動きが始まっている現状を踏まえ、「どうなる どうする 日本の教育〜子どもたちの尊厳と学習権を確保するための教育の在り方を問う〜」をテーマに、海外事情を含めた幅広い報告、討論がなされました。 第2分科会は、自殺の問題が人権問題であることを確認し、弁護士・弁護士会が自殺対策への取組みに参加する意義、果たすべき役割について検討すべく、「強いられた死のない社会をめざして〜『自殺』をなくすために私たちができること〜」がテーマとされました。 第3分科会は、開催地の佐賀県が、玄界灘と有明海に面し、高い漁業生産高を誇る地域であることもあり、「豊かな海をとり戻すために〜沿岸域の保全・再生のための法制度を考える〜」をテーマとしたシンポジウムが開催されました。
- 2 大会(5日)
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- (1) 特別報告
- @東日本大震災に関する件、A法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会に関する件、B秘密保全法制に関する件、C法制審議会少年法部会に関する件、について報告がなされました。
- (2) 決議
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以下の各決議が採択されました。
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@ 子どもの尊厳を尊重し、学習権を保障するため、教育統制と競争主義的な教育の見直しを求める決議
ア 国、地方自治体及び教育委員会は、教育行政全般に渡り、憲法・子どもの権利条約・教育基本法に定められた、子どもの学習権・成長発達権の保障、教育の自由の尊重、教育への不当な支配・介入の禁止等の教育上の諸原則を遵守するとともに、子どもと教師の思想良心の自由を始めとする精神的自由権を尊重すべきこと
イ 地方自治体及び教育委員会は、入学式、卒業式等の学校行事等において、教職員及び児童・生徒に対し、国旗に向かって起立し、国家を斉唱することの強制及びその不履行を理由とする不利益処分や不利益取扱いをしないこと等
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A 強いられた死のない社会をめざし、実効性のある自殺防止対策を求める決議
ア 国及び地方自治体は、自殺予防対策として、自殺に至る経緯、自殺要因について、遺族の心情に配慮しながら、関係者等への聴取り等によって徹底的な調査を行うこと、特に、国の発表で自殺の「原因・動機」として最も多いとされる「健康問題」について、その背景にある社会的要因を分析することにより、自殺予防対策に役立てること
イ 法律家・医療者・福祉関係者などと積極的に連携してネットワークを構築し、その連携の中核を担うこと等
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B 豊かな海をとり戻すために、海岸線の新たな開発・改変の禁止、及び沿岸域の保全・再生の推進を求める決議
ア 国及び都道府県等は、沿岸域環境を保全するために、現状の海岸線を保全し、原則的に開発・改変をしないこと
イ 国は、生物多様性の保全・持続可能な漁業資源の利用などの基本原則を踏まえ、沿岸域を再生するための妨げとなる、開発を推進する方向となっている法制度を見直すなど、再生に向けたより実効的な法制度の整備を行うこと等
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@ 子どもの尊厳を尊重し、学習権を保障するため、教育統制と競争主義的な教育の見直しを求める決議
3 なお、来年度の大会は、10月3日、4日に、広島市において開催されることとなりました。