日本弁護士連合会第55回人権擁護大会プレシンポジウム
「先生だってこどもに向き合いたい 〜どうなる どうする 日本の教育〜」が開催されました
憲法問題委員会 委員
倉 知 孝 匡
9月15日(土)に、当会会館5階ホールにて、日弁連人権擁護大会のプレシンポジウムとして「先生だってこどもに向き合いたい〜どうなるどうする 日本の教育〜」が開催されました。
第1部は、名古屋大学大学院の中嶋哲彦教授による講演でした。
中嶋教授は、こどもがおかれている現状について、様々なデータを基に、日本のこどもの学力は世界の上位にありながら自己肯定感が低く、精神的な満足を得にくい状況であり、また、貧困層にとって高等教育を受けるには様々な面で負担が重くのしかかるため、高等教育を受けられにくい現状であること、これらは、これまでも国連等から指摘されてきた問題であるにもかかわらず解消されていないことを説明されました。
そのうえで、現在の大阪での問題を中心に、学力向上のために政策的に競争原理を持ち込んだ場合、イギリスのサッチャー政権で起こったように、教師がこども一人一人ではなく、クラスの平均点だけに集中し、結果としてこどもの学力向上につながらない可能性があることを指摘されました。
さらに、貧困層では、学習の前提となる生活面を支えることが重要であるにもかかわらず、その支援事業を廃止して、その予算を塾代に振り替えようとするなど、問題解決とは反対の政策が行われている現状について報告していただきました。
第2部は、中嶋教授に加えて、現役の公立学校教師お二方を交えてのパネルディスカッションでした。
議論の中では、現在のこどもの現状として、他人の評価や結果を気にして、間違いや結果がすぐに出ないことを嫌う傾向が強いため、新たな事へ挑戦することが難しいことが強調されました。
また、親や地域と上手く関係を持ち、一緒に問題を解決していくことが学校にとって必要であって、モンスターペアレントと言われる人も、よくよく話を聞いてみると学校の対応や説明に問題がある場合が多いなど、現場ならではの発言もありました。
そして、公教育においては「弱者の目」が何より必要であって、どんな子でも受け入れ、その子の視点に立って一緒に行動することが何より重要であるという点は大変印象に残りました。
ただ、一方で、こども一人一人に対応しようにも必要な業務が増えたため、多くの教師達が対応できない現状があり、この点について解決されない限り、学力の問題にしろ、いじめの問題にしろ、なかなか問題解決が進まないことも指摘されました。
今回のプレシンポジウムは、教育学の研究者の方と現役公立学校教員の方をゲストに迎えて、データに基づいた分析と現場での実践から現在の教育の問題点と問題解決について考える内容でした。
今回のプレシンポジウムが、参加していただいた皆様にとって教育問題について考えるのに役立てば大変ありがたいです。