会報「SOPHIA」 平成24年8月号より

=刑事弁護・裁判員裁判に役立つ刑事処遇の基礎知識=

「有罪判決確定後の受刑者の処遇」連続勉強会第2回
覚せい剤離脱などの特別改善指導と無期懲役者の仮釈放



日時 平成24年7月23日 15:00〜16:00
場所 弁護士会館3階小会議室
講師 成瀬 伸子 会員

会 員 坂 口 斗志也


  1. 今回は1時間で2つのテーマを扱った。1つは「仮釈放の実情と無期刑受刑者の仮釈放」で、もう1つは「覚せい剤離脱、性犯罪者、暴力団離脱などの特別改善指導」である。それぞれのテーマにつき、制度の概要や問題点を踏まえた講義が行われた。
  2. 仮釈放について
    (1)仮釈放の実情
    仮釈放率(満期釈放者と仮釈放者の合計に対する仮釈放者の比率)は、平成22年は49.1%であり、男女別に見ると、男子が47.6%、女子が69.1%である。仮釈放者につき、刑の執行率(執行すべき刑期に対する出所までの執行期間の比率)は、70%未満2.3%、80%未満22.9%、90%未満45.8%、90%以上29.0%である。 数字を見ることで、運用の実態をリアルに把握することができた。これまではなんとなく、大部分の人に仮釈放が認められるし、真面目に服役していれば刑期の3分の2が経過する頃には仮釈放されると思っていたが、実際は全く違っていた。過半数が満期釈放であり、また、執行期間が3分の2の時点で仮釈放を認められる人はほとんどいない。

    (2)無期刑受刑者の仮釈放
    無期刑受刑者の仮釈放についても、私は運用の実態をまるで知らず、誤った予測を立てていた。このことは世間一般も同様らしく、平成20年8月に法務省が開いた勉強会において、「マスコミ報道等を確認したところ、一部に無期刑受刑者は、受刑後10年又は十数年が経過すれば、仮釈放が許されて自由になるとの理解」があることが報告されている。しかし、このような理解は全くの見当違いである。 無期刑受刑者のうち、仮釈放者数は過去10年間で合計64人、その間死亡した者は合計138人である。仮釈放者の平均受刑在所期間は、平成22年の時点で35年3月である。刑の執行期間が20年以内で仮釈放が許可された者は、平成17年以降はいない。平成22年の時点で在所期間が50年以上の者が7人いる。 このように、仮釈放者よりも在所中に死亡する者の方が多数であり、また、仮釈放が認められる者も相当長期間服役していることから、無期刑が運用上、終身刑化しているともいえる。
  3. 特別改善指導について
    (1)刑事施設における指導
    受刑者に対して行われる改善指導には、一般改善指導と特別改善指導とがある。特別改善指導には、薬物依存離脱指導、性犯罪再犯防止指導、暴力団離脱指導等の6種類が用意されている。それぞれでプログラムの内容は異なるが、認知行動療法を基本とする。 どのプログラムにおいても、指導者が不足しており、受講すべき受刑者が受講できていないという問題がある。

    (2)保護観察所における指導
    仮釈放者に対しては、保護観察所が改善指導を行う。例えば、薬物事犯者においては、薬物検出検査とワークブックによる教育が義務づけられている。 犯罪者の更生を図る上で、社会内における改善指導の必要性は高いが、前述のように、仮釈放率が低いのが現状である。
  4. 次回の勉強会は、9月13日の15時から開催される。また参加したいと思う。