子どもの事件の現場から(113)
弁護士以外の付添人の方との協働を経験して
会員 吉 川 哲 治
- 1 はじめに
当会でも当番付添人制度が発足して1年以上が経過し、観護措置を取られた少年については100%に近い割合で弁護士が付添人に選任されるようになってきました。そのため、付添人=弁護士という感覚が一般的になってきていますが、この度、私が弁護士として付添人に就任し、同時に、少年友の会の会員の方も付添人に就任したという事例を経験しましたので、報告させていただきます。
- 2 事案の概要
この事案は「施設送致申請事件」でした。少年は約1年前から保護観察中の身でしたが、あることをきっかけに遵守事項違反を繰り返すようになり、保護観察所からの再三の指導も効を奏さず、特別観察期間中もやはり遵守事項違反が繰り返されたため、保護観察所が少年を少年院に送致して欲しいと家庭裁判所に申請したのでした。
私は、この少年が約1年前に保護観察処分となったときにも付添人をしていましたので、家庭裁判所から、今回も付添人への就任を打診され、二つ返事でOKしました。
そして、この時調査官から、親代わりのような感じでもう1人、弁護士以外の付添人を付けることを予定していること、候補者は少年友の会の会員の方であることを告げられました。
実はこの少年は、幼少時に親からの虐待を受け、その影響で軽度の発達遅滞があり、ずっと知的障害者の施設での生活を余儀なくされていました。そのため、親の協力は全く期待できず、施設も少年の遵守事項違反の繰り返しに疲弊していて協力を得られにくい状況であったことから、少年を精神的にサポートするためにもう1人付添人を付けるという話になったようでした。
- 3 もう1人の付添人の方との協働
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この事件は、少年院送致という結論がほとんど決まっているような事件だったため、付添人活動としてどのようなことが出来るのか、非常に悩ましい事件でした。
ただ、結論が決まっているからこそ、今後の少年の更生を考えれば、納得して少年院に行って貰う必要があると思い、とにかく少年と話をすることを心がけました。そして、もう1人の付添人の方とは、同じ付添人ではあっても異なる立場から話をすることで、少年が内省を深める手助けが出来ればと考えていました。
しかし、結論から言えば、私たちが事前に想定していたようには付添人活動は上手くはいきませんでした。もともとこの少年は内省が深まりにくく、面会内容について情報交換しても、少年が話している内容は同じようなものだったため、役割分担をして効果的な関わり方をすることが出来ませんでした。内省が深まらない少年と話をしながら、自分の力のなさを感じるということが続いていました。
- 4 最後に
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審判の結果は医療少年院送致でした。最終盤になって、ようやく少年が自分の本当の気持ちを話してくれたり、内省が深まるきっかけらしきものが見られたため、私は最後のチャンスとして試験観察を実施して欲しい旨の意見を提出したのですが、結論は変わりませんでした。
もう1人の付添人の方との協働について言えば、本件はもともと難しいケースだったと思いますが、事案によっては弁護士以外の付添人が付くことで、少年の更生の手助けになる可能性はあるのかなと感じましたので、今後も機会があれば取り組んでみたいと思っています。