会報「SOPHIA」 平成24年8月号より

ブランドバッグ窃盗事件

〜消えたバッグと彼女の行方〜

 

刑事模擬裁判
法教育委員会 委員
合 田 信 一


1 模擬裁判とは
 サマースクールの模擬裁判は、@弁護士が演じる刑事模擬裁判劇、A子どもたちがいくつかのグループに分かれて行う評議の2部構成によって行われます。

2 今年のシナリオ

今年のシナリオは、被害者宅から限定品のブランドバッグが盗まれたという住居侵入、窃盗事件で、争点は犯人性でした。

子どもたちには、目撃者の証言は信用できるのか、盗まれたバッグと被告人が売ろうとしたバッグは同じものなのか、付き合っていた彼女から預かったという被告人の供述は信用できるのか、などを考えてもらいました。


3 迫真の演技!

アンケートで、子どもたちから「迫力ある演技で楽しかった」「劇の完成度が高く、最後までおもしろく見られた」という回答をもらえたとおり、模擬裁判に参加された委員の演技はとてもすばらしいものでした。私も思わず見入ってしまいました。

ブランド大好きギャル役の児島貴子委員、気弱でお淑やかな目撃者役の荒川裕子委員、名古屋弁全開の質屋店主役の水野吉博委員、いかにも事件に巻き込まれそうな挙動不審な被告人役の熊谷豊和委員、みごとに役を演じきってくれました。


4 白熱の評議!

今年の評議は、6名の子どもたちと2名の弁護士が1グループになって行われました。

評議では、「街灯しかなかったんだから、目撃者は暗くて犯人の顔はよく見えなかったと思う」「いや、目撃者は視力1.2で犯人との距離も5mだったんだから、街灯の明かりがあればしっかり見えたはずだ」など、活発な議論が交わされました。犯人役の人に5m離れたところに立ってもらって、目撃状況を再現するなど、評議の仕方にも工夫が凝らされていました。


5 評議の結果は?

子どもたちの評議の結果は、有罪10、無罪47でした(ちなみに、評議開始前は、有罪14、無罪43)。

実は、私はこのシナリオを有罪寄りで書いたつもりでした。模擬裁判を傍聴していた某委員からも、「これは真っ黒だな」という声が漏れ聞こえてきて、むしろ評議では有罪に偏りすぎないかちょっと心配していました。しかし、ふたを開けてみると私の心配は全くの杞憂でした。

子どもたちは、目撃者の視認状況を詳しく検討したり、被告人の一見不合理と思われる弁解にも耳を傾けるなど、とても慎重に被告人の有罪・無罪を検討してくれました。


6 最後に

「自分が裁判や司法について考えるいいきっかけになった。弁護士という仕事に興味を持った」

子どもたちにこのような感想を持ってもらえたのも、模擬裁判チームの皆様のおかげだと思います。本当にありがとうございました。