会報「SOPHIA」 平成24年8月号より

A子さんの処分やいかに!?

ティーン・コート(子ども裁判所)

 

法教育委員会 委員
土 井 洋 佑


1 ティーン・コートとは

ティーン・コートとは、罪を犯した子どもの処分を子どもが決める「子ども裁判所」を体験してもらう講座です。

今回の事案は、普段は真面目で正義感が強い高校生のA子さんが、地下鉄で席を譲ろうとしないB子さんを注意するために追いかけて行き、口論になったところ、ついカッとなってB子さんを押したら階段から転落して怪我をさせてしまったという傷害事件です。

当日は15人の中高生が参加し、それぞれ5人ずつ裁判官役、検察官役、弁護人役に分かれました。裁判官役はさらに3人、2人の2チームに分かれ、2つの裁判体を結成しました(2人のチームには見学に来ていた修習生にスーパーサブとして入ってもらいました)。


2 白熱する尋問!

子どもたちは、各役割に分かれて作戦会議を行った後、ティーン・コートの目玉である尋問に臨みました。主尋問で弁護人役の子どもたちが少年の良いところを引き出そうと質問をすると、反対尋問では検察官役の子どもたちが鋭い尋問で切り返してきます。彼らの巧みな尋問には、私たちも感心しっぱなしでした。また、少年役の加藤博子委員は、迫真の演技で、全く反省していないふてぶてしい少年を見事に演じ、子どもたちの白熱した尋問を引き立ててくれました。

当日ははるばる横浜弁護士会から大(?)視察団が訪れたこともあって、多くの大人が見守る中で開催された法廷でしたが、その緊張感にも動じることなく、堂々と尋問をする子どもたちの姿はたくましく感じました。


3 注目の処分発表!

尋問が終わり、検察官役、弁護人役が最終弁論を行った後、裁判官役の2チームがそれぞれ処分内容を発表しました。その内容は、「自分の正義感が本当に正しいものであるかどうか友人と話し合い、意見をもらう」、「B子さんの周りの人に話を聞き、今回の怪我のせいで周りの人がどれだけ迷惑を被ったか聞く」等といったもので、いずれのチームも、全く反省していない少年に、ただ謝罪をさせるのでなく、自分がどういうことをしてその結果どのような被害が生じたのか考えさせることができるような処分を考え、工夫が凝らされていました。このように本質をついた処分を考えた子どもたちには、私たちも驚かされました。

他にも、忍耐力をつけるために福祉施設でアルバイトをする、カルシウムを取ってイライラを抑えるために牛乳を毎日1本ずつ飲む、などティーン・コートならではのユニークな処分も出て、会場が笑いの渦に包まれました。


4 おわりに

こうして、今年も大好評のうちに終わることができました。子どもたちも「普段体験することがないことが体験できた」「様々な視点から事件を見ることができた」などの感想を持ってくれたようで、何よりです。来年以降も、子どもたちの期待に応えられるティーン・コートが開催されることを期待します。