原発問題の学習会「地形学から見た断層に関する知見」
日時 | 平成24年7月2日 16:00〜18:00 |
場所 | 弁護士会館5階ホール |
講師 | 鈴木 康弘 教授(名古屋大学) |
公害対策・環境保全委員会 委員
小 林 哲 也
- 1.はじめに
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東京電力福島第一原発事故から1年以上が経過しました。当委員会では同事故以来、原発問題に関する学習会を開催してきました。今回は、名古屋大学減災連携研究センターの鈴木教授(ご専門は変動地形学)を講師に迎え、活断層の基礎知識、原発耐震審査における活断層評価の問題点等について解説していただきました。
なお、これらの問題点は多数の原発を抱える北陸地方にとっても重大であることから、本学習会は中弁連の主催とし、各単位会にも中継されました。実際、本学習会の後、関西電力大飯原発と北陸電力志賀原発について、敷地内の活断層の存在が指摘され、保安院により再調査の指示がなされました。
- 2.活断層の危険性の過小評価
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断層運動は地震の原因であり、断層はその結果です。活断層は最近数十万年間に活動したことがあり、今後も活動する可能性が高い断層です。しかし、日本の原発は活断層集中地帯につくられているものが少なくなく、活断層の危険性が過小に評価されています。
その過小評価の背景には、主に、@原発の立地場所が決まってから活断層調査が行われるため、活断層の存在を否定しがちになる、A建物自体の耐震性が極めて高く、活断層付近であっても大丈夫という技術過信がある、とのことでした。
例えば、東京電力柏崎刈羽原発について、過去に東電は音波探査による断層の調査を行っていたのですが、そのデータを鈴木教授を含む専門家が分析したところ、東電の評価の約5倍の長さの断層が推定され、しかもそれは活断層の可能性が高いことが判明しました。音波探査データを分析すると、断層の線が見えなくても、新しい地層が撓(たわ)んでおり、その下に断層があることがわかるのですが、東電は「音波調査で断層の線が見えなければ断層は無い」という論理で、過小評価を行ったのです。都合の悪い断層は無いこととして原発という危険施設を設置したわけです。
- 3.新耐震審査指針による改善点とその後の問題点
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旧原発耐震審査指針における活断層認定は、確実な地質学的証拠が見つかった場合にのみなされるといった問題がありました。
そこで、平成18年9月「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」、平成20年6月「活断層等に関する安全審査の手引き」(平成22年12月「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」に統合)において、@審査において考慮すべき活断層の範囲を拡大する、Aリニアメント調査(地表の直線的な線状模様を確認)という限定された方法から、変動地形学的調査という、より緻密な方法に変更する、B施設の安全に影響を与える可能性が否定できない断層は、審査において考慮する、などの改善がなされました。
しかし、2008年、当時の福田首相が国会答弁において、「原子炉施設が活断層の上にあることのみをもって不適合となるものではない」と発言する有り様で、新耐震審査指針も「仏つくって魂入れず」になりかねません。
- 4.おわりに
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原発が活断層の上にあったり、近傍に活断層があったりするのは、危険極まりないことです。すべての原発について、改めて詳細な活断層の再調査が必要であると思いました。
なお、本年12月8日には、中部電力浜岡原発の危険性をテーマにしたシンポジウムを開催予定です。是非ご参加ください。