会報「SOPHIA」 平成24年7月号より

法科大学院世代として今思うこと

〜法学部卒、旧司法試験未受験の立場から〜

 

会員(新第64期)
上 杉 謙 二 郎


1 法科大学院への進学

私は、法学部出身ではありますが、もともと旧司法試験を受験する意向を持っておらず、大学在学中に本格的な法律の勉強はしていませんでした。  法科大学院進学を決めたのは、もちろん種々の要因がありますが、比較的短期間で司法試験に合格することが出来るということが大きかったと思います。

2 法科大学院入学〜修了

1年目を何とかこなし、2年目に入ると、演習科目と共に実務科目がカリキュラムに含まれてきて、非常に慌ただしくなりました。レポートや日々の予習に追われ、新司法試験対策は殆ど手を付けられない状況でありましたが、授業にきちんと取り組んだことで、力をつけられたのではないかと思います。  3年目に入ると、試験対策に一定の時間を割くようになりましたが、勉強の中心は、友人たちと組んでいた自主ゼミであり、最後まで予備校は利用しませんでした。このように、同じ境遇の仲間と共に議論する機会が簡単に得られるということは、法科大学院の大きな利点の一つであると思います。

3 新司法試験

新司法試験を受験した感想は、法科大学院での授業をベースに勉強を進めていけば、その他に極端な試験対策を行わなくとも、合格は可能であるということです。すなわち、法科大学院での教育と、司法試験での出題内容は対応していると考えられます。

4 司法修習

修習において要求される実務的な知識については、法科大学院で学んだことと大きく乖離するものではないと感じました。ただ、要件事実を除いては、法科大学院で学んでから時間が経っていたこと、及び、そもそもほとんど学んでいないこともあり、その都度復習・学習は必要となりました。  実務修習そのものに関しては、以前の前期修習の必要性が高いとまでは感じませんが、研修所起案については、事前課題だけでなく、もう少し対応が必要ではないかと感じました。

5 現在の法曹養成制度

法科大学院は、限られた期間内に、法曹に必要な基礎的知識を習得することが出来るという意味で、非常に優れた機関であると考えます。もちろん、司法試験合格が最大の目標であるという観点からは、ある意味「余分」の多い制度であることは否定できません。しかし、法曹養成制度の一環であると位置づける以上、それは当然のことです。  この点、前期修習に相当する部分を法科大学院が担うという目的は達成されていないとの意見も聞かれるところではありますが、それは、試験第一という風潮だけでなく、法科大学院のカリキュラム自体の問題があるように感じます。というのも、そもそも法科大学院で取り扱う内容自体が十分ではないと思われるためです。現在でも、多くの学生は意欲的に授業に取り組んでいるため、実務科目に充てる時間数を増やし、内容を充実させることで、一定の目標は達成できるのではないかと考えます。ただし、司法試験から修習までの猶予期間の長さと、研修所起案への対策という点は、別途修習の中で対応すべき課題であると思われます。  このように、私は、現行法曹養成制度は、一定の改善を要するとはいえ、根本的な改革が必要であるとは考えていません。