会報「SOPHIA」 平成24年7月号より

法科大学院時代の受験・司法修習

〜ある理系、社会人経験者の場合〜

 

会員(新第61期)
藤 川 誠 二


1 科学者志望

学生時代には科学者か技術者になるとばかり思っていました。中学を卒業後、高専の機械工学科に進学し、大学編入、フリーター、大学院と2年毎に専門分野を替えつつも理系分野を専攻し、一般企業で2年間勤務していました。会社を退職後、名城大学の法科大学院の未修者コースへ1期生として入学しましたが、入学直後には30歳となっていました。  法科大学院入学時には、いわゆる六法の6つの法を全て挙げることが出来ないほど法学とは縁がありませんでした。いずれは社会人経験が活きるだろうと考えていたため、入学前には一切法律の勉強はせず、企業での経験を少しでも積んでおこうと考えていました。

2 法科大学院〜新司法試験

未修者コースは3年間でしたので、3年で司法試験合格レベルまで到達しなければなりません。私の場合、一通り基礎科目を終えるまでは講義に合わせての予習復習を中心に勉強していました。試験対策は、2年目の後半から始めましたが、まだ新司法試験についての情報が少なかったので、勉強のスタイルは旧司法試験の方法を取り入れました。決して出来がいいとは言えない自分が3年間で合格レベルに達するのはこれまでにない挑戦と思いましたが、正直なところ、仕事を辞めただけでなく、入学直前に結婚したこともあり、後に引けない、という状況でした。その意味では、他の学生よりも合格しなければ、という(危機?)意識は高かったと思います。  卒業後、5月中頃に新司法試験がありましたが、努力が実り無事合格することができました。

3 司法修習

新修習では、前期修習がなく実務修習から始まります。私の場合は民裁修習からでした。そもそも前期修習で何をしていたのか知りませんでしたが、いきなりの民裁修習でも特に戸惑ったということはありませんでした。  修習中、「前期修習がなくなり大変ではないか」と言われることもありましたが、そのようなことも特に感じていませんでした。今思えば、法科大学院の3年次に民事及び刑事の裁判演習や、実務家教員による科目が多かったためか、あるいは、社会人経験があったからかも知れません。仮に法科大学院と同じような講義が修習の初めにあったとしたら、新鮮味のないものと思うかもしれません。

4 法科大学院世代として思うこと

法曹養成制度の大きな転換期の司法修習生に対しては、いろいろな意見・評価があることはもちろん認識していました。多くの法科大学院生は、法科大学院にも法曹養成機能としての役割があることは理解しつつも、やはり司法試験合格を最優先に考え、そのための勉強をしていると思います。新司法試験は3回しか受験ができないため、どうしても無駄な勉強は避けたいと考えてしまいます。  私は、経歴からして法科大学院ができなければどのような受験時代を過ごしたのか想像もできません。そもそも弁護士を目指すことを断念した可能性も高かったと思います。社会人が法律の勉強に集中できるという点では、未修者コースのような制度は意義があると思います。ただ、最近は、社会人や他学部出身者が減少しているようなので、その点は気になるところです。