会報「SOPHIA」 平成24年7月号より

旧司法試験の受験経験のある新司法試験合格者という

立場から見た『現在の法曹養成制度』に対する思い

 

会員(新第63期)
岩 田 壮 一


1 はじめに

私は、中央大学3年生のときから同大学卒業後3年目まで、旧司法試験を受験していました。しかし、旧司法試験では合格することができなかったので、旧司法試験を諦め、ロースクールへ入学し、その後、新司法試験に合格しました。個人的な感想でしかありませんが、以下、旧司法試験の受験経験がある新司法試験合格者という立場から、現在の法曹養成制度に対する思いを述べたいと思います。

2 大学卒業から現在までの体験談
(1)大学卒業後1年目

私が大学を卒業した平成16年は、ちょうどロースクール制度が創設された年でした。在学中から旧司法試験を受験してきた私にとっては、司法制度の大きな変革期に巻き込まれてしまったという感覚が強かったです。ロースクールに入学すれば7〜8割合格できるといった情報もあり大変魅力的に感じた反面、ロースクール入試のためには適性試験やステートメント作成、TOEIC受験など、法律科目とは無関係である入試の準備が必要でした。様々な情報に翻弄されながら、結局、この年は旧司法試験もロースクール入試も中途半端に終わってしまいました。

(2)大学卒業後2年目

前年度の反省を生かし、今年度は旧司法試験一本に集中すると決意しました。その結果、択一試験に合格できたものの、論文試験で不合格となりました。

(3)大学卒業後3年目

旧司法試験で最終合格を目指しましたが、結果は不合格。時代の流れに乗る必要性を感じ、旧司法試験へのこだわりを捨て、直ちにロースクール入試へと切り替えました。その結果、平成19年に明治大学法科大学院既修者コースへ入学することになりました。

(4)ロースクール入学後

私にとって、ロースクールでの教育は大変有意義なものでした。旧司法試験受験時代、何度本を読んでもイメージが湧かず、理解できなかった事柄が、学者の先生や実務家教員の解説によって、瞬く間に絡まった糸が解けていくように明快になっていきました。また、ロースクールでは、一緒に切磋琢磨できる心強い仲間がおり、彼らと議論することで多くのことを学ぶことが出来ました。このように、素晴らしい先生方のもとで、心強い仲間達と学ぶ機会を与えてくれたロースクール制度に対し、私は心から感謝しています。

3 現在の法曹養成制度に対する思い

法曹人口の適正数については大変難問であるためここでは触れませんが、上記のとおり、ロースクール制度自体は大変有意義なものだと、私自身は考えています。

ただし、ロースクールに対し、前期修習程度の実務科目の習得を要求することは、少し無理があると思います。試験合格前の受験生にとって、試験に直結しない実務科目の優先度が低いことは当然だからです。ですから、修習で要求される実務科目については、やはり修習の際に教育すべきです。そのためには、短期間であっても前期修習の期間を設け、司法試験と司法修習の橋渡しをする必要があります。修習生にとっても、前期修習があることで、スムーズに実務修習を迎えることができ、その結果、より充実した修習生活を送れると思います。