会報「SOPHIA」 平成24年7月号より

選択型実務修習への取り組み


 

司法修習委員会 副委員長
佐 藤 浩 史


1 選択型実務修習とは

選択型実務修習は、分野別実務修習を経た後に、修習生が自己の進路や関心に応じて主体的に選択、設計することにより、分野別実務修習の成果の深化と補完を図り、又は分野別実務修習では体験できない領域での実務修習をするための課程として、新司法修習において初めて採り入れられた制度である。

選択型実務修習では、弁護修習先の事務所を拠点(ホームグラウンド)とした上で、裁判所、検察庁、弁護士会から多様な個別修習プログラムが提供されているほか、全国の修習生を対象とする全国型プログラムも提供されている。また、修習生自身による自己開拓型のプログラムの実施も可能である。

2 当会での選択型実務修習の現状

当会では、選択型実務修習の意義を重視し、実施初年度から積極的なプログラムの構築、提供に努めてきた。当会の提供プログラムは、全国でも極めて充実したものと思われる。次の3つに大別される。

(1)個別事務所配属型

弁護の専門領域について、各領域の実務に積極的に取り組んでいる会員を指導弁護士として募集し、2週間程度、修習生をその事務所に配属させてマンツーマンでの修習を行う。専門領域として、刑事弁護、少年事件、家事事件、企業法務、倒産事件、医療過誤事件、知的財産事件、労働事件、民暴事件、損害保険実務、消費者・サラクレ事件、犯罪被害者支援実務、行政事件、支部修習がある。

個別事務所での修習に加え、近年では、より修習内容の充実を図るため、当該領域の関連委員会等の協力を得て、期間中の1〜2日程度、講義、演習等を内容とする集合的修習を実施している。例えば、医療過誤事件では、名古屋地裁医療集中部との共催により、座談会、病院見学等を行っている。また、消費者・サラクレ事件では、消費者委員会の夏期研修合宿への参加、刑事事件、少年事件では、具体的事例に関するより踏み込んだディスカション、民暴事件では、経験豊富な会員による講義、といったメニューを提供している。これら集合的修習については、同時期に他のプログラム選択のない修習生に拡大参加を呼びかけているものもある。倒産事件については修習生のニーズが高いことから、個別事務所配属型から独立させ、修習生の全員に近い参加を得て、1日の集合的修習を実施している。DV事件修習では、集合的修習のみを実施し、弁護士やカウンセラーによる講義、母子生活支援施設の見学等を行っている。

(2)外部委託型

当会以外の外部団体、企業に委託し、数日〜2週間程度、修習生数名を派遣して体験型の修習を行わせる。内容は基本的に委託先にお任せしている。外部委託先の開拓を積み重ねてきた結果、現在の委託先として、地方自治体(愛知県、名古屋市)、民間企業(中部電力、デンソー、東邦ガス、トヨタ自動車、名古屋鉄道)、マスコミ(朝日新聞、NHK、名古屋テレビ)及び法テラスがある。

(3)模擬裁判(民事・刑事)

裁判所、検察庁との共催による民事及び刑事の模擬裁判を実施している。特に、民事模擬裁判は当会の主催により、毎年、記録の選定、シナリオや証拠資料の作成を当委員会が行っている。模擬裁判とはいえ勝敗の結果が出ることから、民事、刑事とも修習生は例年熱心な取組みを見せている。