今、刑務所ではどんな処遇がされているか
連続勉強会 第U期第3回
愛知県地域生活定着支援センターより講師を招いて
刑事処遇に関する委員会 委員
木 村 斉
- 1 はじめに
行刑の現場と協働して、高齢・障害等により自立困難な矯正施設退所者の支援をされている愛知県地域生活定着支援センター長の都竹則一氏(名古屋刑務所の篤志面接員も務められている)を招き、平成24年3月26日に連続勉強会が開催された。
- 2 同センター設立の経緯
法務省は、出所受刑者約3万人のうち約7200人が出所後に親族等の受け入れ先がなく、さらに、そのうち約1000人が高齢・障害により自立困難であり、また、高齢・障害を有する出所受刑者の5年以内の刑務所再入所率が極めて高いという調査結果を深刻に受け止め、厚生労働省と連携して、「罪を犯した障がい者の地域生活に関する研究」を立ち上げた。その中で、ア療育・教育・相談が地域生活の中で一体的に行われる仕組み作りの必要性、イ矯正施設内での社会復帰に向けた処遇・教育を踏まえ、地域生活を送るまでのケアマネージメントと退所後直ちに福祉サービスが受けられることの重要性、ウ一人一人にあった福祉サービス、継続的な支援と本人理解のための十分な地域との連携の必要性等が明らかになった。そこで、厚生労働省は、平成21年度に、各都道府県に地域生活定着支援センターを整備することにした。愛知県では、平成22年4月28日に設置された。
- 3 支援業務の概要
業務内容は、@コーディネイト業務(本人の意思や必要なサービスを確認し、受け入れ先施設の確保や福祉サービス利用のために必要な申請の支援等で、矯正施設にいる段階で行われる)、Aフォローアップ業務(受け入れ先施設や本人に対する支援・助言等で、矯正施設退所後に行われる)、B相談支援業務(福祉サービス等の利用に関する相談)、C関係機関との連携業務(司法・福祉等の関係機関との連携)、Dその他の業務(業務を円滑かつ効果的に実施するための業務)である。
- 4 支援業務の現状
同センターは、現在、年間予算が約1700万円で、4人の職員で活動している。そのため、全ての案件についてコーディネイト業務をすることは物理的に無理であり、保護観察所が主体となった選定会議によって支援対象者を絞り込み、支援をしている。平成22年度には36人の支援を、平成23年度には46人の支援をした。この数は、福岡に次いで多い。
本人との面接で本人の福祉的ニーズ、福祉的支援を受ける上での問題点等を把握し、次に福祉サービス等の調整計画を作成し、さらに、受け入れ先(更生保護施設、病院、グループホーム、民間アパート等と幅広い)の確保のための調整、福祉サービス等の申請支援等を行う。
実際には、共同生活になじまない人がいたり、介護のための見回りを必要とする人がいたりと個々具体的な支援にはご苦労があるようだ。また、退所後直ちに福祉サービスが受けられるように矯正施設にいる間に障害者手帳を取得する工夫をされているが、知的障害の場合はその資料の入手がとても困難(学校記録等に該当記載がないことが多い)で、ご苦労があるようだ。そして、活動費に限りがあること、矯正施設ごとに温度差があること等の課題もあるようだ。
- 5 追記
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勉強会の後、同センターが4月23日から、名古屋市中村区則武1-20-11コーポ則武1階(電話052-414-5142、FAX052-414-5143)に移転されると連絡を受けた。