会報「SOPHIA」 平成24年3月号より

外国人相談シリーズ

不法就労助長



 

人権擁護委員会 国際人権部会 部会員
笹 尾 菜穂子

〈設問〉

私は約15年前、日本人の配偶者等の在留資格で来日し、約3年前には、永住資格も得て、家族の生活を支える立場です。
 最近、知人の会社に、私の出身国の外国人をアルバイトとして何度か紹介したところ、私が紹介した外国人は、いずれも違法なオーバーステイであったことが判明したとして、私は入管に収容されてしましました。
 なぜ私は収容されたのでしょうか?また、私は今後も家族と日本で暮らしていきたいし、仕事は休めないので、一日も早く外に出たいのですが、なにか方法はありますか?



〈回答〉
1.不法就労助長と退去強制

従前は、不法就労については、就労者本人を退去強制とする(入管法24条4号イ)とともに、それを助長する行為を刑事罰の対象として(73条の2)取り締まっていました。
しかし、平成21年の入管法改正により、不法就労助長行為及びそれを教唆・幇助する行為も、退去強制事由となりました。



2.24条3号の4

次のイからハまでに掲げるいずれかの行為を行い、教唆し、又はこれを助けた者
イ 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせること。
ロ 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置くこと。
ハ 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又はロに規定する行為に関しあっせんすること。


本件において、あなたの紹介した外国人は、いずれもオーバーステイであったことから、アルバイトは「不法就労」(70条1項3号の2)にあたります。また、あなたの行為は、複数回にわたって、何人かの外国人を紹介していますから、「業として」のあっせんにあたる可能性があります。

そうすると、あなたには24条3号の4ハ違反容疑があり、収容令書に基づき収容されたと推測されます。なお、法務省は違反容疑があれば全件収容する建前(全件収容主義)を採っていますが、日本への定着性が高い永住者に対する違反調査については、収容せず在宅で調査するという運用をしているようです。もっとも、調査への協力姿勢等、具体的な事情により、収容されるケースもあります。


3.退去強制までの手続(以下のHP参照)
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/index.html

本件において、あなたについて、違反調査→違反審査・同認定→口頭審理の請求→口頭審理・同判定→異議の申出→法務大臣裁決という流れを経て、在留特別許可の判断がなされます。


4.在留特別許可

永住者は、退去強制事由が認められたときでも、在留特別許可が認められる場合があります(50条1項3号)。
在留特別許可の判断の際に考慮される事情については、以下のHPにてガイドラインが公表されています。
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00008.html


5.仮放免

また、被収容者は仮放免を請求でき、許可されれば、永住者の場合、稼働も認められる可能性があります。