会報「SOPHIA」 平成24年3月号より

「全国一斉投資被害110番」開催される



 

消費者問題対策特別委員会 委員
名古屋先物証券問題研究会 会員
倉 田 麻 紀

1 はじめに
 3月8日・9日の2日間にわたり、当会及び名古屋先物証券問題研究会の共催で「全国一斉投資被害110番」が開催されました。
 当日は、午前10時から午後4時まで、当委員会及び名古屋先物証券問題研究会の会員を中心に、常時4〜5名の弁護士が待機する形で電話相談に対応しました。
 今回の110番は、投資被害の予防と救済に取り組んでいる全国の弁護士有志で構成される先物取引被害全国研究会の企画によるものであり、全国においてほぼ同時に実施されました。


2 110番実施の趣旨

昨年1月、改正商品先物取引法が全面施行となり、不招請勧誘禁止が導入されましたが、一部でそうした規制を潜脱する業者がいるなど、被害が根絶されたとは言い難い状況です。かえって業界では、不招請勧誘禁止を解除するよう立法に働きかける動きもあり、被害実態の把握と救済が急務となっています。
 また、未公開株商法、社債商法、投資組合への出資名目による詐欺的投資被害事案については、昨今被害防止に向けた様々な取り組みが行われていますが、相変わらず多数の相談が寄せられています。
 今回の110番は、これら投資被害の実態を調査し、救済を図るとともに、立法への働き掛け等につなげていくための資料とする目的で行われたものです。


3 110番の結果

相談件数は、詐欺的投資被害13件(未公開株6件、社債3件、ファンド・匿名組合4件)、社債4件、国内公設先物取引2件、通貨オプション1件の計20件でした。
 被害者の年齢層としては、50代1名、60代2名、70代4名、80代5名、不明9名でした。
 相談内容については、断定的判断の提供や説明義務違反等、勧誘時に問題のある事案が多数を占めました。


4 まとめ

今回の110番においては、全国的な統計からみても、相談者の大多数が70代以上であり、主に高齢者がターゲットにされていることは明らかです。特に詐欺的投資被害事案については、こうした傾向が顕著です。投資経験のない高齢者が、突然の勧誘により、一瞬にして老後資金を奪われ、生きる希望さえ喪失してしまうという被害がなかなか減少しないことについては、大変憤りを感じます。
詐欺的投資被害以外の事案についても、相談者から具体的に話を聞いてみると、高齢者に限らず、取引の内容について全くといえる程理解していない方も多く、電話での取引概要の聴き取りにすら苦労する程です。
 国内の商品先物取引については、度重なる規制強化がなされ、市場の減少に比例して、相談件数も減少しています。しかし、寄せられる相談は旧態依然とした外務員による悪質勧誘によるものであり、今後も被害救済は不可欠です。
 今回110番を経験し、今後も様々な投資被害の救済に取り組んでいく必要があると改めて感じました。