画期的な連携〜出会い系サイト被害全国一斉110番〜
会員 小 田 典 靖
1 出会い系サイト被害の深刻化
皆さんは、出会い系サイト被害というと、どのような被害を想像するだろうか。
多くの会員は、不埒なことを考えた男性がちょっと手痛い目に遭うというイメージを抱くのではないだろうか。
しかし、これは大きな勘違いである。
最近の出会い系サイト被害は、決して異性と出会えることなく多額の金員を詐取されるという深刻なケースが多い。
平成23年12月1日に国民生活センターが出会い系サイト被害に関する注意喚起をしているが、それによると、最近は「高収入が得られる」等というメールや広告、内職情報サイトをきっかけに出会い系サイトと知らずに登録してしまい、どんどんとポイント料を費消させられる事案が急増しているとのことである。
このような事案の被害金額は2010年度の1年間で約34億円である。
そして、被害者の性別は女性が3分の2で、男性が3分の1である。
2 110番の実施
このような出会い系サイト被害に対処するため、12月12日を中心として全国一斉110番が実施された。
愛知においても、会員有志からなる出会い系サイト被害対策弁護団と当会との共催で110番が実施された。
今回の110番には、今までにはない、非常に画期的な点がいくつかあった。
まず、国民生活センターとの連携である。
各地の弁護士会・弁護団と連携して国民生活センターにおいても110番が実施された。
国民生活センターが弁護士会と連携して110番を実施することは初めての試みであった。
次に、全国で30以上の地域において110番が実施された。
国民生活センターとの連携の影響だと思われるが、出会い系サイト被害という単発の110番企画が、全国30以上の地域で実施されるということは希有の事例である。
3 110番の結果
全国の弁護士会・弁護団に寄せられた相談件数は200件を超え、国民生活センターに寄せられた相談件数を加えると、相当数の相談があったことになる。
国民生活センターとの連携という初めての試みであり、相談件数がどの程度になるか注目されたが、連携した甲斐あって、多数の方から相談を受けることができた。
なお、愛知の相談件数は30件強であり、最近、流行している被害類型もたくさんあった。
そして、今回の110番の実施により、この相談件数に表れない効果が1つあったように思う。
それはマスコミを通じた啓発効果である。出会い系サイト被害のような悪質商法被害を防止するためには、規制や刑事罰も大事だが、最終的には個々の被害者が注意することが大切である。
今回の110番では、110番を実施する直前の国民生活センターの注意喚起、国民生活センターと弁護士会・弁護団との初めての連携、全国30以上の地域での実施など、注目すべき要素ががたくさんあった。
そのため、各地のマスコミにおいて他の110番よりも大きく取り上げられ、これによる啓発効果は非常に大きなものがあった。
その意味では、相談件数に表れない大きな成功を収めることができた110番であった。
4 被害の撲滅に向けて
とはいえ、出会い系サイト被害が今回の110番で撲滅されたわけではない。
今後も引き続き、この問題に取り組んでいく必要があると思われる。