会報「SOPHIA」 平成23年11月号より

子どもの事件の現場から(108)

少年は、変わる。



会員 小 林 克 彰

「施設しか選択肢がない・・・。」審判数日前までは、何ともやり切れない思いで動いていたケースです。

補導委託先から帰りながら「2か月後には、試験観察も終わって、保護観察になるだろう」と考えていた。

少年は、2か月前の審判(1回目)で補導委託付試験観察になっていた。少年は17歳、実父母との3人家族であった。中学3年生のときに少年院送致歴があるが、その後は、職を転々としながらも、仕事を続けていた。今回の非行事実は、恐喝。少年は、母親が不倫していることを知り、ムシャクシャして、恐喝をしてしまったと話していた。審判(1回目)では、少年の就労への強い希望や調査官の協力もあって、補導委託付試験観察になっていた。

2か月ぶりに会った少年は、イキイキとしていた。仕事のこと、補導委託先での生活のこと、給料で母親にプレゼントを買ったことなどを話してくれた。補導委託先の方の話によれば、仕事も真面目にしており、生活態度も悪くないとのことだった。調査官からは「2か月後に審判をして、試験観察も終わりですかね」との話も出ていた。

1か月後、調査官から電話があった。少年が恐喝事件に関与していた疑いがあり、これから少年と一緒に警察署に行って話をしてくるとのことだった。正直、驚いた。「アウトかな…」とも思った。しかし、後日、調査官から、今回の件は立件されないことになったと連絡があった。少年の話によれば、友人と一緒にゲームセンターに遊びに行ったところ、友人が恐喝しているのを見つけ、止めに入ったが、友人がそのまま恐喝してしまったとのことだった。「変わったな」と思った。ただ、少年は、恐喝したお金の一部を断り切れずに受け取ってしまったこと、友人と一緒に喫煙や飲酒などをしていたことも正直に話してくれた。それを聞いて、少しがっかりしたが、少年が友人の恐喝を止めようとしたことが嬉しかった。

結局、このまま試験観察を終わらせるのではなく、もうしばらく様子を見るということになり、再度、中間審判(2回目)が開かれ、試験観察が継続されることになった。

2回目の審判から1か月ほど経った頃、少年の母から電話があった。なぜか嫌な予感…。「Xという人につきまとわれているので、助けて欲しい」と言う。話を聞いてみると、Xは、暴力団関係者であり、少年の母と不倫関係にあった。少年の母は、少年が1回目の審判を受けるにあたって、関係を解消したが、その後再びXと不倫関係になってしまった。少年の母は、少年が2回目の審判を受けるにあたって、Xに関係の解消を切り出したが、Xは、納得せず、少年の母に付きまとうようになったとのことであった。「変わらないな…」と思った。その後、少年の母と一緒にXと面談した。長い間、Xのギョロリとした目を見ながら話をした。その結果、Xは、二度と少年の母に近づかないと約束した。

そして、2回目の審判から3か月ほど経った頃、最終審判(3回目)が開かれ、少年は、保護観察となった。

少年は、照れくさそうに「ありがとうございました」と言い、父親・母親と一緒に3人で帰って行った。帰って行く3人の姿を見ながら、「少年は、大丈夫だろう」と思った。

付添人として活動した8か月の間を振り返ると、少年に対しては、大したことは何ひとつしてあげられなかった気がする。しかし、少年は、変わった。付添人として、これでいいのだろうかと思いつつ、少年の今後に期待せずにはいられない。